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2019年度入試志望動向
私大難化 受験生翻弄 今春は一段落? でも不安
私立大の入学定員超過の基準を厳格化する国の動きを受け、各大学がここ数年入試合格者を絞っており、倍率が上昇するなど受験生が翻弄(ほんろう)されている。今春は難化が一段落するとの見方が多いが、入試シーズンを目前にした受験生からは不安の声も聞かれる。(安福晋一郎)
定員超す合格 国が厳格対応
「軒並み不合格でした」。名古屋市守山区の男子浪人生(19)は、立命館大や明治大など私大3校を受験した1年前を振り返り、ため息をついた。模試では、志望校の多くは合格可能性が5割前後の「C判定」。私大の定員厳格化は耳に入っていたが、高校の教員らから「チャンスはある」と言われ「1校くらいなら引っ掛かると思っていた」と話す。今年は去年と同じ大学に加え、もう少し難易度の低い大学も受ける予定。「不安はあります。模試の合格圏ボーダーも信じていいのかどうか」と漏らした。
私大は従来、合格しても入学しない受験者を見越し、合格者を多めに出してきた。ところが文部科学省は、都市部の大規模校への学生の集中に歯止めをかけようと2016年から定員超過した私大への補助金不交付の基準を厳格化。昨年まで段階的に不交付となる超過率を引き下げてきた。
各大学は合格者数を絞り、18年の合格者数は関東、関西、中京圏の大規模難関大を中心に前年比1~2割程度も減少。受験生の安全志向から中堅私大は志望者が増えた。
合格者を15年から3年間で34%減らした南山大(名古屋市昭和区)の入試担当者は「定員を超えないよう慎重にならざるを得ない。合格者を出す見極めが非常に難しい」と話す。合格した場合に入学する歩留まりの高まりも、合格者減につながっているという。
絞り込みによる反動も。ある大学関係者によると、定員を下回りすぎないよう、いったん不合格になった受験生に3月末まで追加合格の電話をかけ続けるケースもあったという。
文科省が年々引き下げてきた補助金不交付の基準は昨年で下げ止め。代わりに検討していた、定員超過人数に応じた減額措置を今年は見送った。大学や予備校の関係者からは「合格者減に歯止めがかかる」との声が出ている。
だが、受験生の不安は残る。東京の私大を狙う愛知県春日井市の女子浪人生(19)は「合格者数が戻るわけではないし、合格のボーダー上では安心できない。これ以上減らさないでほしい」と願う。
幅広く受けリスク分散を
河合塾の富沢弘和教育情報部長の話 就職環境の好転を受けた文系人気で私大の志願者が増える中、昨年の入試では、私大の合格者に対する志願者の倍率は4.1倍と15年ぶりの「狭き門」になった。
注目されるのは昨年、いくつかの難関私大の入学定員充足率が100%を下回っていたこと。新学部の設置を控え、設置認可基準にある定員超過率を下げるために絞ったとみられる。これも私大の合格者数の減少を招いたようだ。
今年はこうした要因がなくなり下げ止まるだろう。ただ、今年はここ数年の反動で受験生が警戒している。昨年10月の模試の動向を見ると、難関私大を敬遠し、中堅私大を志望する人が増えている。
受験生は特定の大学、学部に絞るのではなく幅広く受けることでリスクを分散してほしい。
(2019年1月28日)
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