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英語民間試験 地方の受験生 不利に

 2020年度から始まる大学入学共通テストでは、英語の民間検定試験が導入される。負担を減らすためへき地や離島の受験生に検定試験を免除する例外措置があるが、適用を受けるためのハードルは高い。地方の受験生ほど不利になり、「格差につながる」との声が漏れる。(諏訪慧)

厳しい条件 選択肢少なく

例外措置

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 「大部分の生徒にとって、例外措置は救済になりません」。岐阜県北部の進学校として知られる県立斐太高(高山市)の進路指導主事、足立宏教諭は話す。

 共通テストで用いられる検定試験は、英検、GTEC(ジーテック)、TOEFL(トーフル)など7種類。異なる試験の成績は「CEFR」(セファール)の尺度で比べる。受験生は3年生の時にいずれかを最大2回受け、出願資格を得たり、共通テストの英語に加点されたりする。

 受験生の負担軽減のため、文部科学省は2年生の時に受けた検定試験の成績を活用できる例外措置を設定。適用の条件は、6段階あるCEFRのレベルで上から3番目の「B2」以上で、「離島・へき地に居住または通学している」か「非課税世帯など経済的に困難」であることとした。

へき地とされた斐太高の最寄りの高山駅周辺=岐阜県高山市で
へき地とされた斐太高の最寄りの高山駅周辺=岐阜県高山市で

 「離島・へき地」の高校は4月に公表。全国に304校あり、斐太高もその一つだ。ただ、B2は英検なら準1級~1級レベルで、2年生で達するのは簡単ではない。毎年100人以上を国公立大へ送る斐太高でも、B2レベルは数人。特に力を入れて勉強している生徒や帰国子女に限られ、ほとんどは3年生で検定試験を受けることになるという。

 会場を巡っては、英検が7月上旬、高山エリアに設けると発表。斐太高は周辺の高校とともに、GTECの運営会社に高山地区での実施を求めている。

 7種類の検定試験のうち、足立教諭は、現実的な選択肢は英検とGTECの2種類と見込む。「地元で受けられない試験の方が高得点を取りやすいかもしれず、選択肢が少ないのは不利。センター試験と比べて地域格差を生みやすい。他の検定試験も高山地区で実施してほしい」と訴える。

基準 交通事情を考慮せず

へき地認定

表

 交通が不便なのにへき地とされないケースもある。「最寄りの都道府県庁舎または人口10万人以上の市の市庁舎までの直線距離が原則50キロ超」が基準で、交通事情は考慮されないからだ。さらに分校の場合は、本校の所在地を起点に距離が算出される。

 中部地方でへき地とされたのは石川、岐阜、三重の3県の20校。愛知、長野、福井、滋賀、静岡、富山の各県にはなかった。

 例えば、山林に囲まれ、本校から約30キロ離れた静岡県立浜松湖北高佐久間分校(浜松市天竜区)。同市の統計によると、最寄りのJR飯田線の中部天竜駅の乗客数は1日当たり130人(2017年度)。斐太高の最寄りで、観光地として整備されたJR高山駅と比べて1割に満たない。

 中山間地域の教育を支える佐久間分校には、全校生徒56人のうち愛知県の東栄町や豊根村からも11人が通学する。規模は小さいが、毎年10人近くが大学に進み、国公立大の合格者も。共通テストを受ける今の2年生は23人で、11人が進学を希望する。

 英語担当の平野彰吾教諭によると、検定試験を受ける生徒は、同市中心部へ行く可能性が高い。公共交通なら路線バスと電車を乗り継いで約1時間40分だが、路線バスは今秋の廃線が取り沙汰されている。

へき地ではないとされた浜松湖北高佐久間分校の最寄り駅、中部天竜駅。1日の乗客数はJR高山駅の1割に満たない=浜松市で
へき地ではないとされた浜松湖北高佐久間分校の最寄り駅、中部天竜駅。1日の乗客数はJR高山駅の1割に満たない=浜松市で

 JR飯田線で片道2時間近くかけて愛知県豊橋市で受験する選択肢もあるが、センター試験では親が送り迎えするのが一般的。どこで検定試験を受けても、家族が協力することになりそうだ。

 平野教諭は「検定試験に挑戦するのはいいこと」と前向きに捉えつつ、「送り迎えのため親は仕事を休む必要があるかもしれない。負担増は間違いなく、申し訳なく感じる」と話す。

 こうした実情を受け、全国の国公私立高校の校長約5200人で作る全国高等学校長協会は7月末、文部科学省に要望書を提出。希望する時期・場所で検定試験を受けられないこと、家庭の経済状況や地域によって受験機会に差が出ることなどを挙げ、不安解消を求めた。

CEFR 「外国語の学習、教授、評価のための欧州共通参照枠」などと訳される。国際機関「欧州評議会」が2001年に公表した。「読む」「聞く」「書く」「話す(会話のやりとり)」「話す(表現力)」という要素と、「全体的な尺度」について、それぞれ最も低い「A1」から最も高い「C2」の6段階で表す。共通テストでは異なる検定試験の成績をCEFRに対応させるが、研究者からは「CEFRに対応させても、異なる試験の成績を比べることはできない」との指摘が出ている。

(2019年8月4日)

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