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英語の民間検定試験 スピーキング 吃音ある生徒 戸惑い

 2020年度に始まる大学入学共通テストで、英語の民間検定試験が導入されるのは、今のセンター試験の「読む」「聞く」に加えて「書く」「話す」の能力をみるためだ。総合力を試す効果が期待される一方、戸惑う人も少なくない。言葉が詰まって流ちょうに話せない吃音(きつおん)のある愛知県内の高校2年男子生徒(17)もその一人。実際にどのように感じているか聞いた。(諏訪慧)

「不利になる」「免除には抵抗感」

スピーキングへの複雑な思いを話す男子生徒=愛知県内で
スピーキングへの複雑な思いを話す男子生徒=愛知県内で

 「スピーキングの試験は怖い。健常者と比べ、不利だと思う」。そう漏らす男子生徒の通う高校は毎年、100人以上が国公立大に合格。多くの同級生と同じように大学進学を希望しており、共通テストを受けることになる。

 吃音に気付いたのは、小学校低学年のころ。例えば「おはよう」と言おうとして、「お、お、お、お、おはよう」となるなど、最初の一言目を連発してしまう症状があり、家族や同級生から「しゃべり方がおかしい」とたびたび指摘された。病院で相談すると、医師から「多分、吃音でしょう」と言われた。

 しばらくすると、症状は変化した。今は口を開けて声を出そうとしても、一言目が出なくなることがある。歌っていて高音を出そうとした時に、かすれて声が出ない感覚に近いという。特に出にくいのは母音。緊張している時に起こりやすいが、「自分のことなのに、いつ症状が出るか分からない」と説明する。

 一言目の母音が出てこないのは英語でも同じ。質問への回答で文頭になることが多い「I(私)」や「It(それ)」などを使えないことが難点だ。そこで、授業では「私の意見は…」と表現する場合、一般的な「I think…」ではなく、「My opinion is…」などと言い換えを考えて対応している。

 高校からは、共通テストを見据えた練習として、3年生になるまでに検定試験を受けるよう指導を受けている。だが、この男子生徒は「スピーキングが怖いのでこれまで検定試験は避けてきた」と二の足を踏んでいる。

 当事者でつくるNPO法人「全国言友会連絡協議会」(東京)は3月、多くの高校生が受験するGTEC(ジーテック)で吃音の受験生への配慮が十分でないとして、不利な扱いを受けないよう文部科学省に要望した。

 その後、GTECは時間延長や症状に応じて免除を認めると公表。同協議会の事務局担当者は「一歩前進」と評価しつつ、「実際にどのように運用されるのか分からないので不安は残る」と訴える。

 他の検定試験では、共通テストでは機械に言葉を吹き込む形式でスピーキングを実施する英検が、吃音の受験生ら向けに面接官と向き合って話す方式を特別に用意する。筆談に加え、言葉に詰まっても焦らせないよう面接官が気を配ったり、聞き取りにくくてもじっくりと耳を傾けたりして実施する。共通テストに用いられる7種類の検定試験はいずれも何らかの配慮を打ち出す。

 一方の男子生徒。「大学受験だけを考えれば意味があるだろうが、検定試験はもともと英語力を示す資格のはず。スピーキングの免除で級やスコアを得たところで、例えば就職活動時に企業は資格として扱ってくれるのだろうか」と悩む。免除を受けてスピーキング対策に時間を費やす必要がなくなると、「吃音でない人に比べて得な感じがしてしまう」と後ろめたさも感じるという。

 今のところ、男子生徒は、母音で始まらない単語から話し始める作戦を駆使して検定試験に挑む予定だ。「入学後の就職活動などで使える英語力の証明にしたい」との思いからだが、こうも思わずにいられない。「言い換えを考えなきゃいけない時点で、他の受験生よりスタートラインは後ろにありますよね」

吃音(きつおん) 言語障害の一つ。全国に推計で約70万人いるとの研究がある。幼少期に発症することが多いが、原因は不明。明確な対処法はなく、医師、言語聴覚士らがおのおのの発声法などで改善に取り組む。全国言友会連絡協議会のほか、全国高等学校長協会が7月、吃音などを念頭に「障害のある受験生への配慮が検定試験の事業者ごとにまちまちである」として、不安解消策を文科省に要望した。

(2019年9月1日)

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