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共通テスト 記述式も見送り 教育現場に混乱 重い責任

 大学入試センター試験に代わり、2021年1月に始まる大学入学共通テストで、国語と数学の記述式問題が見送られることになった。英語の民間検定試験導入延期に続く見直し。二枚看板を下ろした入試改革は、本番までわずか1年というタイミングで事実上、白紙に戻った。受験生をはじめ教育現場を振り回した安倍政権の責任は重い。(芦原千晶)

政権主導の赤点改革

■意欲

 17日午前、記述式見送りを発表した萩生田光一文部科学相の記者会見。第二次安倍政権以降の歴代文科相の責任を問われると「その時々の大臣がベストを尽くしてきた」と弁明した。

 安倍政権にとって「教育再生」は、経済政策と並ぶ看板。今回の入試改革は、大学教授や知事ら有識者がメンバーとなり、13年1月に議論を始めた首相の私的諮問会議「教育再生実行会議」の提言が、その礎になっている。

 短命に終わった第一次政権(06年9月~07年9月)で設けた「教育再生会議」に「実行」を加えた名称に、意欲が見てとれる。初会合では当時の文科相、下村博文氏が大学入試改革の検討を求めた。

 その教育再生実行会議が13年10月にまとめた提言は、「1点刻みの合否判定を助長している」と述べ、現在のセンター試験を批判。知識量だけでなく、思考力や表現力を測る試験の重要性を唱えた。経済界が、英語に堪能なエリート育成を望んだことから、読み書きだけでなく、会話の能力も測れる英語の民間検定試験の活用も盛り込んだ。

■変容

 しかし、こうした「思考力」などを重視する理念を、50万人が受け、3週間程度で採点する必要がある共通テストに反映させることは、困難を極めた。

 「思考力・判断力・表現力」を問うとうたった国語の記述式問題は当初、最大300字程度の記述を目指したが、採点の難しさなどを指摘する意見が殺到。結局、最大80~120字程度に抑えた上で、解答に必要不可欠な語句など詳細な「正答の条件」を示した。

 それでも「採点にブレが出る」との懸念は消えなかったが、一方で記述式問題は、自由な記述を許容し、マークシートの選択式問題では測れない力を見るのが本来の目的。ある大学関係者は「詳細に正答の条件を決めては、やる意味がない。何のための記述式なのだろう」と漏らした。

■歓迎

 看板政策ゆえに、いつしか変えること自体が目的化したようにも見える国の姿勢。文科省の一部事務方は「無理筋の改革」として、記述式などの導入に抵抗したが、政権の意向に押し切られたとも伝わる。政治アナリストの伊藤惇夫氏はこう評する。

 「目に見える改革、変化がほしいから、安倍晋三首相と側近の政治家たちがセンター試験に手をつけた。教育をつかさどる文科省も『受験生ファースト』でなく『官邸ファースト』で従った。安倍政権は教育を軽く扱った」

 入試改革の見直しに、中部地方の国立大関係者はほっとした様子を隠さない。

 「英語の民間検定試験も記述式問題も、国の意向を考慮して、合否判定に使う予定だったが、本音は使いたくなかった。白紙になって本当によかった」

 現場の望まぬ改革を掲げて受験生らを混乱、疲弊させた文科省。信頼を取り戻すのは容易でなさそうだ。

(2019年12月18日)

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