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英語・民間試験の課題 京都工芸繊維大 羽藤由美教授に聞く

 2021年度大学入試から共通テストに導入される英語の民間検定試験について、全国立大82校のうち北海道、東北、京都工芸繊維大の3大学は全学部で活用を見送った。導入の課題は何か。英語を「話す」力の評価法を開発する京都工芸繊維大の羽藤由美教授(応用言語学)に、あらためて聞いた。(諏訪慧)

全学部活用見送り スコア比較 公正さ疑問 

京都工芸繊維大 羽藤由美教授

 -何が問題ですか。

 大きく2点あります。まずは、民間検定によって測る能力が異なること。例えば、TOEFL(トフル)は北米圏の大学に留学する時に求められる英語力、TOEIC(トーイック)はビジネスで使われる英語力を主にみます。体力なら握力と50メートル走を比べるようなものです。

 2点目は、民間検定の成績を比べるのに用いる対照表です。受験生は、試験のスコアが、6段階ある「CEFR(セファール)」のどこに当てはまるかで、出願資格を得たり、共通テストに加点されたりします。

 ところが、スコアと6段階の対応は各試験の実施団体が文部科学省に届け出たもので、第三者による科学的な検証はされていません。ある生徒は英検で「A2」、別の生徒はGTEC(ジーテック)で「A1」だとして、A2の生徒がA1の生徒より能力が高いと言える裏付けがありません。

国が監督する仕組みに

 -「話す」を含めた4技能を入試で測ることに反対ですか。

 いいえ、賛成です。私が反対なのは、国が監督する仕組みのないまま共通テストを複数の民間検定に任せることです。スピーキングの採点は難しく、公平な採点の仕組みをつくるには費用がかかります。民間検定は受験料が2万円超から5000円台まであり採点の質が同じと言えるのか疑問です。

 国が進めているのは公教育の無計画な市場化です。幼いころから民間検定やその対策セミナーなどを手軽に受けられる都市部に住み、お金も払える裕福な家庭の子どもが有利になり、地方の人や貧しい家庭は不利になります。立ち止まって考え直すことが必要です。

 -スピーキングを入試に導入する場合、どんな方法が理想ですか。

 国が主導して民間企業や研究者らの知恵、技術を結集し、統一したテストを開発することです。開発の努力を重ねることで、技術が進歩し、コスト削減も可能になっていくのではないでしょうか。

表

羽藤教授ら開発 スピーキングテスト AOで使用、手厚い採点

 京都工芸繊維大は、英語のスピーキングテストを2015年から1年生の学年末試験に、17年からは一部のAO入試に使用。羽藤教授を中心に、2年余りかけてテストを開発した。

 学生はパソコンに向かってヘッドセットを装着して臨む。「図書館の設備拡充を大学幹部に訴えなさい」などの課題に対して考えを述べさせる設問。発音や文法ではなく、説得できているかなど課題に対する達成度を評価する。

 採点は、600人が受ける1年生の試験はネーティブスピーカーと非ネーティブスピーカーの英語教員2人で実施。より公正さが求められるAO入試は大学教員5人で行い、最高点と最低点を除く3人の平均を取る。AO入試で実施できるのは受験者が少なく、手厚く採点できるため。テストの開発は大学院入試用を念頭に始めたが、羽藤教授は「まだ難しい」と慎重だ。

 同大の学生は建築や電子工学などを学び、多くが大学院に進んで企業に就職、英語で仕事をする機会がある。夏休みなどに英国やオーストラリアの大学に通う英語研修もある。4年生600人余りのうち2割以上が、TOEICのスコアでビジネスで使えるとされる730超を得ている。

(2019年6月16日)

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