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2019年度入試志望動向

国公立大で新たに「主体的な学び」評価 私立大は中堅に志望者集中か

 大手予備校の河合塾が、10、11月に実施し、全国の約31万人が受けた第3回全統マーク模試の結果から、2019年度大学入試の志望動向を詳しく分析した内容が明らかになりました。11月末には名古屋市内で「第3回大学入試情報分析報告会」を開催。報告された内容などを基に、「難関国立大」「難関私立大」「中部地方の主な国公立大」「中部地方の主な私立大」の各パートに分けて詳報します。

11月末に河合塾が開いた「第3回大学入試情報分析報告会」=名古屋市千種区で
11月末に河合塾が開いた「第3回大学入試情報分析報告会」=名古屋市千種区で

 国公立大は、全体的な志願者数や動向は、ほぼ前年並み。情報系や社会・国際系学部の志望者は前年より増え、農学系、医療系、教育系で減っているほか、「緩やかな文高理低」の傾向があるという。

 入試形態が多様化する中、推薦やAO入試の募集人員が前年より微増して全体の2割に。今後さらに増えるとみられる。また、一般入試の募集人員は、名古屋市立大(看護)の後期日程の廃止を含め、前期日程にシフトする傾向があるという。公立大は今年新設された公立小松大を含め、中期日程で入試を実施する大学が多い。

 一般入試の新たな傾向も見逃せない。高大接続や大学入試改革の流れの中で、「多面的な評価」が採り入れられるようになってきた。愛知教育大の後期日程の一部課程や名古屋大医学科などが、志望理由書など本人が書く必要のある書類を出願時に提出させる。佐賀大は理工と農の2学部で、受験生が申請すれば、研究活動やボランティア、部活動といった活動や実績を「主体的な学び」として評価し、加点する制度を導入する。

 一方、私立大では18年度、入学定員数の超過を抑える大学が増え入試が厳しくなった反動で、都市部の難関私立大の志望者が減少し、中堅私大に集中しそうだという。

 学部の志望動向は、これまで文高理低の傾向が強かったが、前年度の入試で特に文系学部が難化したことを受け、変化。経済・経営・商学部が前年比94%、法・政治学部が96%という。理系では、国立大の傾向と同様に医療系や農学系は不人気だが、情報系は人気。

難関国立大

一橋、東京工業大が人気

難関国立大 前期日程志望者動向=表A

※数値は前期日程の志望者前年比(%)

大学名前年比(%)
北海道大104
東北大93
東京大100
東京工業大108
一橋大117
名古屋大98
京都大95
大阪大101
神戸大98
九州大97

※河合塾が実施した第3回全統マーク模試の結果を基に分析した結果から。

 一橋大は前年比117%、東京工業大が同108%―。難関国立大ではこの2校の人気が高くなっている。国公立大全体の志願者数は前年並みで、情報系や社会・国際系学部の志望者は前年より増えて人気。一方、農学、医学、薬学、教育系で不人気となっている。

 河合塾が10、11月に実施した第3回全統マーク模試の結果を基に分析した19年度の志望動向で明らかになった。北海道、東北、東京、東京工業、一橋、名古屋、京都、大阪、神戸、九州を国立難関10大学とし、前期日程の志望者数を前年と比べて分析した=表A

 北大は法学部以外は人気。特に文学部の志望者数は前年比115%、経済学部が同107%のほか、全国的には低調な農学系の水産、獣医学部がそれぞれ同104%、109%で、医学部(保健学科除く)も同107%と人気。東北大は、教育学部の同130%と法学部の109%以外は全体的に人気が低調。

 東大は文科三類が同104%となったが、理科二類と理科三類は同100%を割り、他の科類は前年並み。東工大は授業料を値上げする中で、理学院が同113%、工学系の学院が同107%と人気を集めている。一橋大は法学部の同130%をトップに、いずれの学部も同110%を超えている。

 河合塾の富沢弘和・教育情報部長は一橋大が人気の理由について「首都圏では、難関私大が文系学部を中心に難化しており、受験生の目は国公立大に向いている。一橋大は早慶を狙えるような成績層で受験生が増加している」と推測。東工大については「近年教育カリキュラムの見直しを行うなど、大学の積極的な取り組みが感じられる。ことし3月に世界最高水準の教育研究活動の展開が見込まれる指定国立大学法人になったことも人気を後押ししている」とコメントした。

 名大は法学部が同111%、情報学部が同110%、経済学部が同104%と人気で、農学部が同91%、医学部(保健学科除く)が同93%と低調。京大は理学部の同103%、文学部の同100%以外は、どの学部も志望者数が前年を下回った。

 阪大は学部ごとの差が大きく、外国語学部が同112%、人間科学部が同110%、基礎工学部が同109%と人気だが、薬学部が同90%で、工学部は同91%と低くなった。神戸大は理学部が同114%、海事科学部が110%、経済学部が同106%で志望者数が前年を上回ったが、経営学部の同92%を含め他学部は下回った。九大は医学部(保健学科除く)が理科の受験科目を変更した影響を受け、同141%と伸ばしたほか、文学部が同107%、共創学部が同106%と人気。一方、法、芸術工、薬学部が同85%以下となるなど他は低調だった。

 今年の偏差値65以上の国公立大志望者の志望校の占有率を調べたところ、文系は東大30.4%、京大20.8%、一橋大13.7%、阪大10.7%。一橋大が前年比1.5ポイント、阪大が同0.3ポイント増えたという。理系では、46.8%が医学科を志望しているが、前年比1.7ポイント減。その他の志望校の占有率は東大18.1%、京大14.2%、阪大4.2%、東工大2.8%で、東大(理一・理二)や東工大、情報系学科で増加が目立ったという。

難関私立大

志願者数、軒並み前年比減

難関私立大 志望者動向=表B

※数値は志望者前年比(%)

大学名前年比(%)
早稲田大87
慶応義塾大93
上智大85
東京理科大100
青山学院大86
中央大86
法政大91
明治大86
立教大91
同志社大88
立命館大91
関西大95
関西学院大90

※河合塾が実施した第3回全統マーク模試の結果を基に分析した結果から。

 私立大入試の志望動向で、都市部の難関大を敬遠する「安全志向」がみられた。特に文系学部では、志望者数が前年比の9割未満のところもあり顕著だ=表B。河合塾が、10、11月に実施した第3回全統マーク模試の結果を基に分析した19年度入試の志望動向で明らかになった。

 主な難関私立大の志望者数を前年と比べて分析。「早慶上理」(早稲田、慶応、上智、東京理科)は文系学部で前年比88%、理系で同94%。「MARCH」(明治・青学・立教・中央・法政)は文系が同86%、理系が同91%、「関関同立」(関西、関西学院、同志社、立命館)は文系が同89%、理系が同97%。河合塾の富沢弘和・教育報道部長も「この10年を振り返っても、こんな低い数字は記憶にない」と語る。難関私立大を敬遠する動きから、逆に中堅の私立大は成績上位層の志望者が増えているといい、難化する可能性もありそうだ。

 18年度入試では都市圏の私立大を中心に、補助金の交付ルールや学部の設置基準を満たすため入学者数が定員を大幅に超えないように抑え、不合格者が増えた。これが19年度入試での難関大敬遠の背景だろう。実際、今春の入学定員充足率は立命館大91.0%、明治大93.8%、青山学院大95.1%、中央大95.5%などだったという。河合塾の今回の模試で、私立大を志望する浪人生数は前年比107%と増えた。

 ただ、ここ2年で入学者数を調整し、定員充足率が大幅に改善した大学は合格者数を絞らない可能性もありそうだ。志望大学のホームページなどで、全体や学部ごとの定員充足率を確認するといいかもしれない。

 学部や募集人員の主な変更では、早稲田大の教育学部が一般入試の募集人員を700人から560人に減らしたほか、青山学院大がコミュニティ人間科学部を、中央大が国際経営と国際情報の2学部を、立命館大がグローバル教養学部を新設。法政大明治大立命館大は、一部の学部で英語の民間試験を利用した入試を実施する。

地元国公立大

中部地方の主な国公立大
前期日程志望者動向=表C

※数値は前期日程の志望者前年比(%)

大学名前年比(%)
愛知教育大95
名古屋大98
名古屋工業大102
豊橋技術科学大102
三重大91
岐阜大98
静岡大104
浜松医科大95
福井大93
金沢大93
富山大95
信州大94
愛知県立大89
名古屋市立大99

※河合塾が実施した第3回全統マーク模試の結果を基に分析した結果から。

 中部地方(愛知、岐阜、三重、静岡、福井、石川、富山、長野、滋賀)の国公立大では、社会・国際系や情報系の人気が高く、医療系の人気が低調だという全国の傾向がより顕著であることが分かった。その影響を受け、前期日程では静岡大の志望者が前年比104%、豊橋技術科学大と名古屋工業大がともに同102%と人気になっている=表C

 河合塾が、10、11月に実施した第3回全統マーク模試の結果を基に分析した志望動向で明らかになった。

 中部地方の社会・国際系の志望者が前年比105%(全国は同102%)、総合・環境・情報・人間系学部の志望者が同110%(全国は同106%)と人気が高かった。また医学科が同85%(全国は同93%)、看護系が同89%(全国は同96%)と低調だったという。

 複数の学部を持つ国公立大の前期日程の志望動向を詳しくみると、三重大は、人文学部が前年比84%、医学部が同88%、教育学部が同90%となるなど人気が低調。6学科を1学科5コースに改組する工学部は同96%だが、個別試験の配点が大きくなったため、センター試験後の動向に留意したい。

 岐阜大は医学部のみ同102%で、他学部は前年を少し下回った。同97%だった応用生物科学部は、共同獣医学科を除いて、この5年ほど志望者は減少傾向という。静岡大は地域創造学環が同133%、情報学部が同123%、人文社会科学部が同108%などが人気だった。同95%だった浜松医科大は医学科でセンター試験と個別試験の配点比率を変更し、個別試験のウエートを重くした。

 福井大は国際地域学部が同141%と伸ばしたが、工学部と医学部は前年比9割前後に。教育学部は全国的に人気が低い中で同99%と堅調だった。金沢大は人間社会学域が前年並みの同97%だったが、他学域は前年比9割ほどまで下回った。

 富山大は人文学部の同121%、医学部の同104%のほかは前年を下回り、人間発達科学部が同81%、工学部と都市デザイン学部がともに同86%。昨年倍率が上がった経済学部は同88%だった。信州大は人文学部の同107%、繊維学部の同104%が人気で、他学部は低調だった。

 愛知県立大はいずれの学部も同95%以下となった。名古屋市立大は学部の差が大きく、薬学部(中期日程のみ)が同88%、経済学部が同92%だったが、総合生命理学部(後期日程のみ)が同112%と人気が高かった。他学部はほぼ前年並みだが、同101%の医学部は二段階選抜が導入されるので注意が必要。

(名古屋大の志望動向は、難関国立大のパートにあります)

地元私立大

中部地方の主な私立大 志望者動向=表D

※数値は志望者前年比(%)

大学名前年比(%)
愛知大89
愛知医科大97
愛知学院大95
愛知工業大108
愛知淑徳大99
金城学院大98
至学館大82
椙山女学園大95
大同大112
中京大94
中部大100
東海学園大103
豊田工業大92
名古屋外国語大89
名古屋学院大124
名古屋学芸大84
名古屋女子大109
南山大92
日本福祉大97
藤田医科大98
名城大95
皇学館大92

※河合塾が実施した第3回全統マーク模試の結果を基に分析した結果から。

 中部地方(愛知、岐阜、三重、静岡、福井、石川、富山、長野、滋賀)の私立大では、全国の傾向と同様に、文系学部で上位の大学を敬遠する動きがあることが分かった。特に外国語系統や経済・経営。商学系統では、偏差値が高い大学ほど志望者は減少しているものの、成績上位層が増えており、安全志向が強まっているという。

 河合塾が、10、11月に実施した第3回全統マーク模試の結果を基に分析した志望動向で明らかになった。

 理系学部では、上位大敬遠の動きはないといい、全国の傾向と同様に、通信・情報系統が人気。一方、建築系統の人気は低調という。大学全体での志望者は、南山大が前年比92%、愛知大が同89%などだった=表D

 主な私立大の志望動向を詳しくみていくと、南山大では理工学部の志望者数が前年比104%となっているほかは、どの学部も100%を切っており、特に経済学部が同86%、外国語学部が88%と低くなっている。愛知大も現代中国学部で同108%となっている以外は、いずれの学部も同90%前後と低調だ。

 中京大は心理学部が同111%、工学部が同106%となっているほかは、どの学部も前年並みか低くなっており、経営学部とスポーツ科学部ではいずれも同82%にとどまった。

 理系学部をそろえる名城大でも志望者数は前年比95%。都市情報学部の同105%以外は、軒並み低調で、人間学部は同83%、外国語学部は同86%だった。愛知学院大は歯学部が同111%、総合政策学部が同106%、法学部が同104%と人気だが、経済学部が同90%で、全体としては同95%と低かった。

 名古屋学院大は一般入試(前期)で、二教科型、三教科型それぞれの募集人員を新たに設定した影響から併願者が増え、全体の志望者が大幅に増加。国際文化学部の同171%、現代社会学部が同161%など全8学部のうち7学部で志望者を増やし、大学全体としても同124%となった。

 中部大は全体としては前年並みだが、国際関係学部が同116%、人文学部が同109%、現代教育学部が同108%と前年を上回った。愛知工業大は経営学部の同111%を筆頭に全3学部で志望者が前年より増え、全体は同108%。大同大も情報学部で同121%、工学部が同109%と人気だった。

 愛知淑徳大はグローバル・コミュニケーション学部が前年比79%と落ち込んだが、交流文化学部は同114%、ビジネス学部が同111%となり、全体としては前年並み。椙山女学園大は全7学部のうち5学部で前年より低かったが、人間関係学部は同112%、看護学部が同105%となった。金城学院大は文学部が前年並みだったが、ほかの4学部で前年を下回った。

 一方、中部地方の私立大でも18年度入試、上位の大学を中心に入学定員数の超過が抑えられ、入試が厳しくなった。その影響で定員充足率が改善された大学もあるが、そうでない大学では、19年度入試で合格者を絞る可能性もありそうだ。

(2018年12月20日)

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