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記述式 大学共通テスト試行
大学入試センターは4日、現行のセンター試験に代わって2020年度から始まる「大学入学共通テスト」に向け、昨年11月に実施した2回目の試行調査(プレテスト)の記述式問題の結果などを公表した。国語で長文の平均正答率が改善する一方、数学は3問の正答率が最大1割程度と低調だった。
数学正答3~10% 本番へ問題見直し
国語 | 問1 | 75.7% |
---|---|---|
問2 | 48.5% | |
問3 | 15.1% |
※正答条件を全て満たした解答割合
数学Ⅰ・A | 問(あ) | 5.8% |
---|---|---|
問(い) | 10.9% | |
問(う) | 3.4% |
試行調査は11月10、11日に実施。本番を想定して大学などを会場に、全国の高校2、3年生計6万8409人が参加した。
記述式は国語と数学で各3問出題。国語で全ての条件を満たした解答の割合は、30字以内で答える問題が75.7%、40字以内が48.5%、80字以上120字以内の長文が15.1%だった。長文の正答率は1回目の0.7%から大幅に改善。センターは「正答の条件、解答パターンの洗い出しなどを徹底し、想定に近づけた」とした。本番のテストで、誤字や脱字は解答の趣旨に影響しなければ減点しない。
数学は数式の記述2問と短文で答える1問で、正答率は3.4~10.9%。前回の2.0~8.4%から向上したものの低い結果となった。無解答率は17.3~62.0%に上り、センターはマークシート問題とのバランスなどを見直す。
記述式問題で、自己採点と実際の採点結果との一致率は、国語が66.0~70.7%、数学が83.3~90.0%だった。一致率を上げるため、センターは正答の許容範囲などを例示する方針。マーク式の正答率は、昨年12月公表の速報時と変更はなかった。
センターは4日、試行調査で未実施だった世界史A、日本史A、地理Aの参考問題例も公表した。試行調査は今回が最後で、文部科学省策定の実施大綱を踏まえ、問題作成方針などの通知を出す予定。
国語の採点精度 難題
受験生 自己採点方式揺らぐ、採点者 能力に差「ぶれ必然」
大学入試改革を受け、2020年度から実施される大学入学共通テスト。「思考力・判断力・表現力」を新たに問い、従来のマークシート式に加え、国語と数学では「記述式問題」も出される。本番前最後の試行調査の結果からは、特に国語の記述式問題を中心に課題が浮上。受験生側も大学側も不安を募らせている。(芦原千晶)
不確かさ
「国語の記述式は戸惑った」。試行調査を受けた高3の女子生徒が振り返る。自己採点で、自分の答えと正答がどこまで合っているか分からなかった。「採点者で点数が変わりそう。共通テストを受ける高2の子がかわいそう」
国語では2つの論理的な文章を読み解き、要約する力などを問う記述式が3問出た。書きだしや文末などに条件を付け、80~120字で答えさせる小問も。解答は各問を4段階で評価した上で、A~Eの5段階で総合評価するが、さまざまな言い回しが可能で、採点は容易ではない。
採点業務は民間業者が請け負う。1答案につき2人で採点し、結果が合わない場合は上位判定者と協議して決定。さらに採点後の答案を点検した。採点結果を補正した割合は約0.3%だった。
試行調査の参加者は約6万8000人だが、共通テストの受験生は50万人規模。採点者は1万人ほど確保するが、東北大の柴山直(ただし)教授(教育測定学)は「専門性や的確さを持つ採点者をそろえるのは無理。記述式問題は、どれだけ設問を簡単にしても採点のぶれが起こり得る」と指摘する。
記述式問題の扱いは各大学に委ねられるが、国立大学協会は全体の2割とする配点案を示した。5段階の評価が一つ違うと10点の差がつく可能性もある。中部地方の国立大関係者は「採点の不確かさがある記述式は配点を高くしづらい」「他大学を様子見したい」と漏らす。
捨て問化
受験生の自己採点と実際の採点との不一致率は約3割にも上った。そのずれは「自己採点方式を揺るがすほど」と、南風原朝和(はえばらともかず)・前東大高大接続研究開発センター長は指摘する。現在、受験生は自己採点を基に志望校を選んでおり、影響は大きい。掛川西高で進路指導を担う駒形一路教諭(国語)は「どれだけ点が取れたか分からない記述式問題は『捨て問』化し、解かずに済ませてしまうのでは」と懸念する。
今回の結果を受け、大学入試センターは採点業務をより正確に速く進めるため、約1万人の高校生の協力を得て秋ごろに準備事業を実施する。正答の条件などの考え方を整理し、冊子にするが、「自己採点を完全に一致させることは難しい」と担当者は話す。
経費増大
課題は他にも。記述式を導入する意義について、センター担当者は「選択肢を手掛かりとせず、考えたことを表現できる」と強調するが、「条件付きの解答で思考力は測れない」と話す大学関係者は多い。
採点業務が加わるため、大学に成績を提供するまでの期間もこれまでより1週間長くなる。試行調査では予定通り進んだが、本番でトラブルなく進むか危ぶむ声もある。
また、採点業務には億単位の経費が新たに発生。現在は1万8000円(3教科以上)の受験料に上乗せされる可能性もある。担当者は「受験生の負担と必要な経費の確保。バランスを取り文部科学省と相談して決めたい」と語るにとどめた。
点字受験 1問減に 国語記述 障害者に配慮
大学入学共通テストでは、記述式問題の導入に合わせ、障害のある受験生に配慮した新たな取り組みが検討されている。点字での受験の場合、国語の記述式問題は解答に時間がかかるとして通常より1問減に。筆記が困難な受験生にはパソコンでの解答も認める見通しだ。
大学入試センターによると、点字受験は記述式の解答も点字で行うことになり、下書きや文字の修正などに多くの時間がかかる。そこで、国語の記述式は通常の3問から2問に減らし、少ない問題数で能力を測れるよう、問題文に手を加える。
記述した文字数のカウントにも相当の時間が必要なため、2問のうち記述量が多い方の問題は字数制限を設けない。
数学の記述式は、点字受験で国語ほどの負担はかからないとして、通常と同様の3問とする。
また、国語、数学ともに、肢体不自由などの障害で記述式の解答欄に文字を書くのが難しい受験生には、センターが開発した入力システムを使い、パソコンでの解答ができるよう検討を進める。
現行のセンター試験では、障害の程度に応じて試験時間を通常の1.5倍まで延長しており、共通テストも同様とする。補助者による代筆なども従来通り認める。
(2019年4月5日)
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