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主体性評価とは-4 識者に聞く

 大学入試における主体性評価について考えてきた連載の最終回。高大接続や大学入試の改革を進めてきた中央教育審議会の前会長で日本学術振興会の安西祐一郎顧問(72)と、教育心理学者で東北大での入試改革に携わる倉元直樹教授(57)に話を聞いた。

世界に通じる力を 日本学術振興会 安西祐一郎顧問

あんざい・ゆういちろう
あんざい・ゆういちろう 1946年生まれ。専門は認知科学・情報科学。元慶応義塾長。日本アクティブラーニング協会会長。

 子どもの数が減っている。主体性を持って人生にチャレンジしていかないと経済も社会も成り立たない。社会で誰もがある程度の暮らしをできるようにするには、イノベーティブな考え方が必要。そういう考え方をする人がたくさん出てきてくれないと困る。インドや中国の学生は意欲があり、ハングリー精神もある。一緒に仕事をするようになった時、日本の若者は本当にやっていけるのかなと。

 ぼく自身は人間の思考や学習の研究をしている。今は人工知能(AI)の実用化や、グローバル化で、予測が難しい時代になってきている。そのような時代を生き抜くためにどんな力が必要か、教育再生実行会議や中央教育審議会で話し合う中で、主体性や思考力、判断力が必要だとなった。

 心の底から目標を持ち、いろいろな人たちと出会いバックグラウンドの違う人と初対面でもきちんと話ができるかが大事。自分とはうまの合わない人とチームでやる機会を持つ。これが主体性、多様性、協働性。高校時代までにどのくらい経験できるかが大きい。

 主体性があるというのは目標を持っていること。eポートフォリオは、これから何を目標にしていこうかなと考える時に役に立つ。主体性を身に付けるためのトレーニングになる。では、どうやって主体性をはかるのかと。大学入試だと二次試験。eポートフォリオは、調査書や活動報告書に役立つのではというのが一つの流れ。

 大学側がやらなければならないのは、「育てたい」と思った受験生に入学してもらうこと。入学者選抜に携わる部門を強化しないといけない。世界の変化に対応していこうとしたら、大学は1日のペーパーテストではなく、ある程度の時間をかけて受験生を選ばなくてはいけない時代が来る。 (大沢悠)

内発性奪う恐れも 東北大 倉元直樹教授

くらもと・なおき
くらもと・なおき 1961年生まれ。博士(教育学)。大学入試センターなどを経て99年から東北大の入試に携わる。日本テスト学会理事。

 主体性が重要ということはみな賛成するが、どう定義し、評価するかとなると意見が分かれ難しい。入試の現場では評価すべきでないとの声が根強い。

 とはいえ、各大学が評価指標を作るとすれば、どんな人材を世に送り出したいかから逆算し、受験生を守るために基準を明確にし、入試で必要な情報が何か考えるべきだ。例えば東北大は研究者の養成大学なので、大切に見たい主体性は、地道な努力を毎日積み重ねていく姿勢。一般入試でも調査書に対応しながらどう項目化し、受験生に自己申告してもらうか検討中だ。

 調査書の活用は長年議論されているが、受験生としては自分のあずかり知らない書類で不合格になると納得できない。誰が手を入れたかも不明で教員の熱心さや表現力にも影響される。eポートフォリオは高校生の時間や教員のエネルギー、費用をかけ受験生の個人情報をためるが、膨大な情報はそのまま入試に使えるわけではなく、外部に漏れるリスクもある。課外活動などに経済格差も響く。

 主体性評価が、健全な高校生活や全人的な教育活動を脅かしてはならない。主体的な行動は内発的な動機に基づくが、「この行動は入試で有利」となったとたん、内発性は失われる。評価を意識して日々行動するのでは若者らしくない。受験生は「この活動が点数になるか」なんて考えず、今しかない、かけがえのない高校生活を過ごしてほしい。

 入試は公平性が大切で、受験生が一人も不当な扱いを受けたと感じないようトラブルなく実施するもの。主体性評価を含め2020年度実施から入試は大きく動く。今、主体性とは何かと話していること自体が異常事態。各大学は本来早く情報提供すべきだが、受験生に負担を掛けないようじっくり考え改革すべきだ。 (芦原千晶)

(2019年1月27日)

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