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主体性評価とは-3 公平な点数化 悩ましく 入試での活用法
2020年度実施の大学入試から本格的に始まる主体性の評価。大学側は、特に受験生が多い一般入試での評価方法に頭を悩ませる。これまで一般入試でほとんど使わなかった高校の調査書や、受験生がeポートフォリオなどを基に書く活動報告書などの活用を国が求める中、先行例などから大学入試現場の課題を探る。 (芦原千晶、大沢悠)
項目、配点…手探りで始動
「筆記試験の得点が低いのに、主体性の評価で高得点をつけていいのか」「英検2級と漢検2級は同じ扱いになるのか」「受験生の書いた書類と調査書で内容が違う場合はどうすれば」「この項目で本当に主体性が判断できるのか」
昨年12月、岐阜聖徳学園大の一室で、ある学部の入試委員会が開かれた。初めて高校からの調査書を得点化し、前月までに合否発表を終えたAOや推薦入試の採点を振り返ると、教員から疑問の声が相次いだ。
英検の資格や部活動の実績など、主体性を評価できると判断した調査書の項目を洗い出して独自に配点。約770人の受験生の調査書を教員がチェックし採点した。わずかだが結果にも影響し「合否は1、2点で変わってくる。より慎重に対応しなければ、と思った」と今井延幸入試課長(52)。「主体性を評価する項目、項目ごとの点数、配点などこれで良かったのかどうか。今後も検討していくが、主体性を入試でみるのは本当に大変と分かった」
主体性評価は、比較的丁寧に選抜できるAOや推薦などの入試だけでなく、受験生が多く選抜期間が短い一般入試でも求められる。対象を合否の境界線付近の受験生に絞る大学もある。
国立の佐賀大は18年度実施の一般入試から、理工と農の2学部で主体性を間接的に評価する「特色加点制度」を始める。受験生はネットでの出願時に、ボランティア活動や全国大会の入賞など高校入学後の主体的な活動や実績を1件だけ任意で申請でき、内容や大学入学後の学びとの関連などを記せる。
加点されるのは合否の境界層のみ。全受験生の約1割、150人ほどになる見込みだ。複数の教員が段階評価し、配点は全体の約5%。同大アドミッションセンター長の西郡大教授(43)は境界層の学力差はあまりないと感じてきたと言い「高校生の日常的な取り組みが中心なので大きな差はつかないが、申請しないと合否に影響が出るだろう。主体性などを評価し、受験生に志望理由を明確にしてもらうことも狙い」。20年度実施分から面接を課さない全学部で導入する。
早稲田大の20年度実施の入試改革も注目を集める。ネットでの出願時、一般入試の全受験生に主体性、多様性、協働性に関する経験を記入させるが、合否判定には活用せず、入学後の教育の参考に使う。得点化もしない。「入試の選抜に使わない資料を出願時に出させていいのか」と驚く大学関係者もいる。
早大が17年度実施した一般入試の受験生は11万7000人。入学センターによると、調査書やeポートフォリオの活用も考えたというが、受験生の多さや高校側への負担などに配慮して見送った。主体性を含めた学力の3要素をみることは早大の中長期計画に合致し、この方法が適切と判断したという。
学力の3要素 「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度(主体性、または主体性・多様性・協働性とも略される)」を指す。2020年度の大学入試改革ではAO、推薦、一般入試のいずれにおいても多面的、総合的に評価することを国は求めており、その方法などは各大学が決める。
姿勢問われる大学
三重大アドミッションセンターによると昨年11月末時点、20年度実施の入試方針で調査書などの活用を明記した国立大は約20校。主体性の評価法に触れる大学はまだ数えるほどだ。宮下伊吉准教授(55)は「各大学がどんな学生を入学させたいか、どんな主体性を重視するのかを考え、独自に公平な評価基準を作ることが大事。公的な調査書と、受験生本人が主体的に学んだ成果を書く書類のどちらをどのように扱うかの判断も悩ましい」と話す。
東海地方の私立大関係者は「初めは合否判定に使う大学と使わない大学が出てきそう。受験生に書かせる事例が増えるのでは」と予測。愛知県の複数の私立大で受験生に提出させる活動報告書の項目を共通化する動きもある。
別の私立大関係者は「うちは学力の高い子が集まりにくい。いかに意欲の高い学生を集めて学ばせ、社会に送り出すかが大事。入試で主体性を見たい」と話す。一方で「調査書やeポートフォリオは高校によって差がある。できるだけ入試に活用したくない」と明かす国立大関係者もいる。
中部地方の国立大が東海、北陸地方などの高校に昨夏実施したアンケートでは、調査書やeポートフォリオの点数化に対し、約6割が反対した。高校側からは「部活を頑張った子とボランティアを頑張った子、どちらが主体性があるといえるのか」「教師の負担が増える」といった声もあがる。
佐賀大の西郡教授は指摘する。「主体性が大事だということは誰もが共感するが、そのとらえ方は人によって多様。公平で客観的な評価基準が作成できたとしても、その基準で評価するうち学生の主体性は均一化してしまう」
いかに的確に公平に主体性を評価し、学生の獲得や教育に生かすのか。各大学の姿勢が問われている。
最終回は、識者のインタビューを掲載する。
(2019年1月20日)
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