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中日新聞掲載の大学記事

2012.03.14

最高齢82歳 卒業の春 守山の福井さん 名産大修了

 守山区中志段味の福井孝之さん(82)が16日、尾張旭市の名古屋産業大を卒業する。同大では過去最高齢。認知症の妻(82)を介護しながら日付が変わるまで勉強し、60年の時を超えて学士の資格を得ることになった。 (水越直哉)

 福井さんは1944(昭和19)年、尋常高等小学校を15歳で卒業し、旧国鉄に入った。内心は中学進学を望んでいたが、父を4歳で亡くし、女手一つで育ててくれた母の姿を見て、進学を訴えられなかったという。

 就職しても後悔は残った。蒸気機関車(SL)の機関士を務めたものの、昇進試験で苦しんだ。「数学なんかは本当に難しく『勉強していれば』と感じることもあった」。85(同60)年、55歳で定年退職した。

 その後、名古屋市内に中学夜間学級という制度があることを新聞記事で知り、2002年に72歳で入学。2年後に定時制高校へ進み08年、名産大入学を果たした。

 孫のような同級生と机を並べ、息子のような教授から講義を受けた。学生はパソコンを教えてくれるなど親切だが、居眠りする姿には「私が子どものころだったら、どしかられて、ビンタが飛んできたものです」と驚く。

■妻介護、家事の傍ら

 夢の大学生活だったが、順風満帆とはいかなかった。2年のときに妻が認知症を発症。自分で家事全般をこなさなければならなくなった。「私の姿が見えないと、家の中を捜し回るんですよ」。日中は外出できず、夜は妻のトイレのために1時間半ごとに起きる。

 それでも卒業を諦めなかった。「毎日午前1、2時まで机に向かった」という勤勉さ。卒論もパソコンで1万2000字を書き上げた。タイトルは「蒸気機関車乗務体験記」。なぜSLが消えたか、環境面と経済的な観点からまとめた。

 高校卒業時には手をたたいて喜んでくれた妻。無反応になってきたのは悲しいが「やりたいと思ったことをやり、卒業できることに満足しています」。16日には、胸を張って卒業証書を受け取る。

(2012年3月14日 中日新聞朝刊市民版より)
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