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学生活動  2025.08.30

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映像製作 情報判断力を磨く 名古屋造形大でワークショップ

ワークショップで、撮影に向けて準備する学生たち=名古屋市北区の名古屋造形大で

ワークショップで、撮影に向けて準備する学生たち=名古屋市北区の名古屋造形大で

■講師に撮影監督 作り手の視点体験

インターネットや交流サイト(SNS)などで、私たちは日々、大量の情報に接している。切り取り動画やフェイクニュースなどの情報の真偽を見極める方法として、映像製作者の視点を知り、情報の受け手として視野を広げることが挙げられる。(住彩子)

■演出で印象変化

 8月、名古屋市北区の名古屋造形大で開かれた2日間のワークショップには、映像製作に挑戦する同大の学生や高校生ら20人が集まった。同じ脚本、同じ役者でプロのカメラマンが撮影した映像と比較し、アングルや間合いで映像の印象が違うことを体験する。講師に、三谷幸喜監督の作品や李相日(リサンイル)監督の「フラガール」などメジャー作品を多く手がける山本英夫撮影監督が招かれた。

 作品で決まっているのは、「別れ」というテーマと5分という尺だけ。1日目に各グループで脚本とコンテ(場面の大まかなイメージ)を描き上げ、2日目は撮影班と演技班に分かれて本番に臨んだ。

 「ちょっとテンポが速いかも」「表情の違いをしっかり捉えて」。撮影のリハーサルを見ていた山本監督が、学生たちにアドバイスする。学生グループの撮影が終わった後、全く同じシチュエーションで、山本監督がカメラを回した。

 撮影後、映像を見比べた。「これは客観的な視点を入れてみました」「微妙な目線の違いで印象が変わってきます」。演者の後ろから撮るか、横から撮るかで主観と客観が入れ替わる。また、相対する2人のどちら側から撮影するかで感情移入の度合いが変化したり、関係性が変わったりする。学生たちは山本監督の説明に聞き入っていた。

 ■冷静に「怪しむ」

 ワークショップは、映画を配給するラビットハウス(東京)が企画。撮影に先立ち、同社の増田英明代表がカメラの仕組みや映画の歴史について教えた。動画の見方については、1895年に世界で初めて有料上映されたリュミエール兄弟の「工場の出口」を例に、「誰もカメラを見ていない」ことや「人がきれいに左右に分かれる」ことを挙げ、何げなく撮られたように見える映像にも隠れた演出があると説いた。

 増田代表は「映像はカメラ位置や編集の仕方一つで意図的なものになる」と強調。映画は観客がどう見るかで印象が変わる。受け手次第のため、教材としてもぴったりだ。「リテラシーを育むことで、今後ニュースや動画に接するときに少しでも怪しむことを考えてもらえたら」と期待。山本監督は「切り取り方一つで印象が変わるのは劇映画の基本」と話した。それはプロパガンダに通じるものがある。ただ「それが全てではないと見る冷静な視点があれば、物語の真実やテーマを見つけることができる」と語った。

 参加した同大情報表現領域1年の進藤桜香さんは「撮影の裏側だけでなく、演出や表現方法の違いを勉強できた。今後は動画を見る目が変わると思う」と話した。

(2025年8月30日 中日新聞朝刊11面より)
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