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お知らせ  学生活動  2021.03.29

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水稲肥料 微小プラごみに 伊勢湾へも多数流出

マイクロプラスチックの調査をする四日市大の学生=2月7日、四日市市の吉崎海岸で

マイクロプラスチックの調査をする四日市大の学生=2月7日、四日市市の吉崎海岸で

 波や紫外線で直径5ミリ以下に砕かれ、浜辺や海に漂うマイクロプラスチックには、水田などで使われた「徐放性肥料カプセル」も含まれている。農業関係者は、20年以上前から農家と連携して流出防止に取り組んでいるというが、海洋プラスチックを研究している四日市大の千葉賢教授(沿岸海洋環境学)は「現状で、伊勢湾にも多数流出している」と指摘する。(足達優人)

 2月7日。四日市市楠町小倉の吉崎海岸で、千葉教授の研究室の学生たちが、マイクロプラごみの実態調査をした。浜辺のごみが集積している11地点で砂を採取。その中には、発泡スチロール片や硬質プラスチックなどさまざまなものが含まれ、もちろん、徐放性肥料カプセルもあった。

 プラスチックの膜をコーティングした農業用の「被覆肥料」は、生育時期に合わせて徐々に肥料が溶出する仕組みになっている。徐放性肥料カプセルは、この肥料成分が抜けきった後の殻を指す。被覆肥料を使えば、年3~4回行う追肥作業を省略できる。製造量の約6割が水稲への利用といわれる。

 全国農業協同組合連合会(JA全農)などによると、水稲で使われる被覆肥料は、20~24ヘクタール当たり、年間約10トン。水田に残ったカプセルは、年月がたつにつれ徐々に微生物に分解されるという。だが、田植え前に行う代かき作業で浮き出し、用水路を通じて流れ出ることもある。

 千葉教授が2020年6~12月に吉崎海岸で実施した調査では、一平方メートル当たり1万個前後の徐放性肥料カプセルが確認された。19年2月に鳥羽市の離島・答志島の奈佐の浜で行った調査では、一平方メートル当たり約1万1000個採取されている。「海に流出したマイクロプラスチックには化学物質などが付着し、それを生物が体内に取り込んでしまう可能性がある」と警鐘を鳴らす。

 県やJA全農は、水田からの海洋流出を防ぐため、農家に対し、水量を減らした「浅水代かき」や、排水口を開けて強制的に水を流すのではなく、自然に土壌に染み込ませる「自然落水」などにするよう啓発している。「防止への取り組みに、農家から否定的な意見を聞いたことはない」と、営農指導にあたる県中央農業改良普及センターの担当者も強調する。

 肥料メーカーも、被膜を薄くして分解度を上げるといった商品開発を進めている。溶出のコントロールが難しいものの、被膜自体が栄養になる硫黄コーティングの肥料も販売している。

 昨年、県はカプセルの流出実態を把握するため、1つの水田をモデルにして、代かき前から稲刈りまでの期間に、強制排水をした場合のカプセルの流出量を調べた。4月下旬~5月の代かきから田植えの時期が最も多く排出され、1日に最大80個だった。

 今月22日には、県内の農協の営農指導員らと研究会を開き、流出防止策を啓発するように呼び掛けた。県農産園芸課の担当者は「調査結果を示しながら、今後も県と農協が連携して流出防止に向けて取り組んでいく」と話す。

 千葉教授は「肥料は日本の農業を支えている。ただ、流出を減らすように業界で取り組み、成果を定量的に調査して公表してもらいたい」と訴える。

(2021年3月29日 中日新聞朝刊三重版より)

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