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中日新聞掲載の大学記事

2013.03.22

忘れて 細胞が促す 名大と九州大グループ 神経伝達の仕組みを解明

 九州大と名古屋大の研究グループは線虫を使った実験で、記憶を積極的に忘れさせる働きをする神経細胞が見つかったとの研究結果をまとめた。21日、米オンライン科学誌に発表した。

 九州大の石原健教授(分子遺伝学)によると、情報を記憶したり、それを保持したりする仕組みは解明されているが、忘却のメカニズムは詳しく分からなかった。研究グループは単純な神経回路を持つ線虫を使った実験で、においの記憶の忘れ方を調べた。

 その結果、忘却を促す作用をしていると分かったのは、頭部にあって、においや温度を感じる「AWC」と呼ばれる神経細胞。近くにある嗅覚神経細胞に忘却を促す物質を放出することで、においの記憶を約4時間で忘れさせてしまうという。

 実験では、線虫に突然変異を起こさせた上で、においの記憶が24時間以上も続く個体を選別し分析。この個体のAWCは忘却促進物質の放出を制御する仕組みが壊れ、忘れにくくなっていることが分かった。

 石原教授は「ヒトなどの高等生物にも、類似のメカニズムが働いている可能性がある」と話している。

(2013年3月22日 中日新聞朝刊36面より)
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