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中日新聞掲載の大学記事

お知らせ  2025.01.16

名市大の敷地内 八高古墳に眠る謎は

発掘調査が進む八高古墳周辺。墳丘や周溝の周囲に白っぽいふき石が見つかっている=名古屋市瑞穂区の市立大滝子キャンパスで

発掘調査が進む八高古墳周辺。墳丘や周溝の周囲に白っぽいふき石が見つかっている=名古屋市瑞穂区の市立大滝子キャンパスで

 名古屋市立大滝子キャンパス(同市瑞穂区)にある「八高(はちこう)古墳」。同キャンパスの再編整備に伴い、昨年7月から発掘調査が進められている。大部分が削り取られ、地上に現存する部分も樹木に覆われ、全容がはっきりと分かっていなかったが、本来の規模や、この地で暮らしてきた人々の生活の様子を知る手掛かりが見つかるか、期待される。(芝野享平)

■キャンパス再編で発掘調査 「渡り土手」など発見

 八高古墳はキャンパス東門のそばにあり、かつて旧制第八高校の敷地内にあったことから命名された。古墳の形は前方後円墳で、古墳時代前半の4世紀末~5世紀初頭に造られたと推定される。前方部は大きく削られ、後円部も崩れており、現在は全長40メートルほどを残すのみ。古墳本体である「墳丘」の全長は70メートルほどとみられ、市教委文化財保護課の山田暁(さとる)さん(38)は「尾張地方で確認されている古墳の中では大規模な部類」と指摘する。

 一昨年、市教委が古墳周辺を試掘したところ「周溝」と呼ばれる古墳を囲む溝が見つかったほか、直径50センチほどの円筒埴輪(はにわ)などが出土。キャンパス再編で古墳の近くに新棟の建設を予定するため、古墳の南西側で本格的な発掘調査を行うことを決めた。

 調査は南側から始まり、新たに古墳の周囲と墳丘をつなぐ「渡り土手」が発見された。市内の古墳で渡り土手が見つかるのは、志段味古墳群の白鳥塚古墳(国史跡、守山区)に次ぎ2例目となる。墳丘に近い部分では装飾や土砂流出防止の役割を持つ「ふき石」が保存状態良く見つかっている。

 新たな出土品では、円筒埴輪のほか、権力者が使うかさ状の道具をかたどった「蓋(きぬがさ)形埴輪」の破片を発見。室町時代の人々が使った茶わんやつぼも見つかったほか、江戸時代末期-明治時代初期に掘られた穴からは、焼き物作りに使う窯道具が出土しており、墳丘に窯があったことが分かる。3月にかけ、残る西側の調査を進める。

 発掘現場は立ち入れない一方、周囲は簡易的なフェンスで囲い、作業の様子は学生や地域住民に公開。昨年11月上旬に大学祭に合わせて開いた現場説明会には、2日間で延べ600人以上が参加するなど、地域住民や歴史ファンの関心を集めている。建設予定の新棟には図書館や食堂が入り、古墳関連資料の展示や、古墳を望めるテラスの設置なども予定。大学広報担当者は「学生や市民が地域の歴史に触れられる施設にしたい」と話す。

 八高古墳北側にある学生会館内の大学史資料館では、古墳からの出土品や歴史的意義を紹介するパネルを展示している。開館は平日午前9時~午後5時。

(2025年1月16日 中日新聞朝刊県内版より)

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