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お知らせ  2019.05.16

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燃料電池 電極触媒に新技術 愛工大 有機物「TOT」を使用

 愛知工業大(愛知県豊田市)の森田靖教授(有機化学)らのグループが、有機物「トリオキソトリアンギュレン(TOT)」が燃料電池の電極触媒に使えることを見つけ、英科学誌電子版に15日発表した。

 燃料電池は、水の電気分解とは逆の原理を使い、水素と空気中の酸素を化学反応させて発電する。排出するのはほぼ水だけで、クリーンなエネルギー源として注目されるが、電極に使い、化学反応を促す触媒の白金(プラチナ)が高額で希少なため、コストや資源面の問題があった。

 森田教授らは、奇数個の電子でできた有機分子「中性ラジカル」を結晶にした有機物TOTを以前から研究。電子を受け取ったTOTが空気に触れると、容易に元に戻って電子を放出する現象を偶然見つけ、燃料電池で酸素に電子を渡す還元(酸素還元)反応を活性化する触媒になりうると考えた。

 TOTが燃料電池の電極のうち、正極として使えるかどうかを水の中に入れて室温で調べた結果、触媒として安定した化学反応を繰り返すことが分かった。また、触媒能力は白金の7、8割という高レベルだった。

 TOTは金属元素を含まず構造が明確で単一なため、細かい改良を加えることが可能なほか、比較的簡単に作ることができる。また、コストは白金の5分の1ほどに抑えられると予想される。森田教授らは実用化を目指して企業との共同研究を始めており「TOTを改良すると白金の触媒能力をしのぐ可能性もある」と語った。(芦原千晶)

(2019年5月16日 中日新聞朝刊25面より)

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