進学ナビ

HOME > 中日新聞掲載の大学記事 > お知らせ

中日新聞掲載の大学記事

お知らせ  2018.05.24

この記事の関連大学

道路の安全高めよ 交差点で人感知装置 開発中 愛知県立大などチーム

横断歩道付近を通行する人の姿を感知し、点灯する装置の試作品=愛知県豊田市のあいち産業科学技術総合センターで

横断歩道付近を通行する人の姿を感知し、点灯する装置の試作品=愛知県豊田市のあいち産業科学技術総合センターで

 交通事故死者数が15年連続で全国ワーストの愛知県から交通安全につながる技術革新を起こそうと、県内の大学、企業などの研究チームが道路の安全性を高める設備や装置の開発を進めている。信号機がない小さな交差点で横断者を知らせるポールなど、最新技術を活用しつつ導入時のコストも考慮した製品で、2018年度内の商品化を目指している。(中尾吟)

 チームが拠点とする「あいち産業科学技術総合センター」(愛知県豊田市)の実験室。横断歩道に見立てた床を歩行者が渡ろうとすると、高さ1メートルほどの柱型の装置に取り付けられたセンサーが自動感知し、ランプが点滅した。

 装置は、信号機のない小さな交差点を渡る歩行者の安全を守る「次世代スマート交差点」の研究を進める中で生まれた。信号機のない交差点では、車の運転者が右左折する際などに歩行者に気付くのが遅れ、事故になるケースがある。歩行者を感知して光るポールを道路脇に設置すれば、運転者に早い段階で歩行者への注意を促すことができ、危険回避につながると期待される。

 愛知県内には交差点が35万カ所あるが、信号機があるのは1万カ所ほど。昨年は年間の交通事故死者200人の6割に当たる121人が交差点や交差点付近で事故に遭い、うち半数以上の69人が信号のない交差点で死亡した。

 ただ、信号機を取り付けるなどの対策は費用面などの理由で限界がある。チームはより手軽で普及しやすい手法を考案。このポールの設置コストは試作段階で数百万円規模と信号機より安く、チームは商品化までにさらなるコストダウンを目指している。

 チームには愛知県立大(同県長久手市)や豊橋技術科学大(同県豊橋市)をはじめ、道路標示施工業のキクテック(名古屋市南区)などの企業を含め計10団体が参加。ポールの他にも、実際の街並みを映像で再現し、交差点などの危険箇所を割り出す道路管理者向けのドライブシミュレーターや、道路の白線が消えかかっていないかを走行しながら判断する車載カメラ、光をためたり、特定の光に反射したりして、夜間に目立つ色に光る路面標示などを開発中。いずれも試作品が完成した。

 チームを率いる愛知県立大の小栗宏次教授(知的情報処理)は「車の安全性を高める技術開発は競って進められているのに対し、道路の安全性を高める研究は進んでいない」と指摘。「交通事故は途上国などで世界的に増加しており、事故防止のテクノロジーは新たな産業になる可能性がある。死亡事故が最も多い愛知県から、こうした技術を率先して広めていきたい」と話す。

■交通死 全国で2番目に多く

 愛知県内では、今年も交通事故が多発している。4月末時点の交通事故死者は63人と前年同期を5人上回り、埼玉県の71人に次いで全国で2番目に多かった。

 交差点と交差点付近での事故はうち48人と前年同期より12人も増え、全体の4分の3を占めた。このうち信号のない交差点の死者は26人と半数超で、高齢の歩行者らが車にはねられるケースが多かった。

 県警の担当者は「交差点は車、人、自転車が交錯する危険な場所という認識を持ち、細心の注意を払って通行してほしい」と呼び掛けている。

(2018年5月24日 中日新聞夕刊11面より)

戻る < 一覧に戻る > 次へ

各種お問い合わせ この大学のHPを見る