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中日新聞掲載の大学記事

2014.05.08

感動体験 行政に生かそう 愛大 新城市職員を調査、提案

 決まりですので−。お役所仕事に気分を害した経験はないだろうか。でも公務員だって実は感動している。新城市の職員を対象にした、そんな調査結果を愛知大がまとめた。調査グループ代表の戸田敏行教授(地域計画)は、市町村の職員が「感動」を地域につくり出し、住民と共有する「感動行政」を提案している。(曽布川剛)
 
 調査は2012年12月に実施した。「心に深く残ること=感動」と定義して、職員750人が協力。7割の職員が「仕事で何らかの感動」があり、その体験を通じて「考え方」や「行動」が変わったと答えた。
 
 「イベントが終わればそこまで。よくある話だと思っていたが、四谷の人たちは違った」。新城市産業政策課の加藤宏信さん(47)は、地域の活性化に取り組む住民に感動した。
 
 「千枚田」で知られる新城・四谷地区であった全国棚田サミット(2005年)を担当。「日本の原風景」の保存を進める地元の人たちと共に、農作業の実演や体験、観察会を企画した。
 
 翌年のサミットを視察し、市の予算は終了した。だが住民たちは棚田にロウソクをともしたり、地域誌を毎月発行したり、活動を続けた。加藤さんは「住民とじっくり話し、地域の希望を形にする手助けをする。そういう仕事の仕方を教えてもらった」と話す。
 
 感動例はほかに「道路補修の工事で、住民がコーヒーを用意してくれた」「患者さんから名前で呼んでもらえた」「編成したバス路線に、お年寄りが乗り込んでいるのを見た時」「土地の払い下げ問題で、住民宅を日参し、理解が得られた」「救急車で搬送したお年寄りから、逆に『頑張って』と言われた」など。意外と当たり前のことに感動し、仕事にやりがいを見いだしている。
 
 新城市の穂積亮次市長は「市民と一緒にまちをつくっていくという連帯感は、これからの自治体運営に欠かせない。職員が感動し、市民と気持ちのつながりを持つことは大きな刺激」と話す。
 
 戸田教授は「自治体が住民の幸せを追求するのは昔から同じだが、今は物質面だけでなく感情面も求められている。どうしたら職員も住民も感動できるのか。仕組みづくりを考えたい」と話し、今後は住民側の感動体験や他自治体の調査を検討している。
 
■住民幸福追求へ 重要な考え方だ

 住民の幸福度を調査し、行政運営に活用している東京都荒川区のシンクタンク・荒川区自治総合研究所・長田七美副所長の話 公務員は会議をすること、補助金を出すことが仕事になってしまいがち。荒川区では行政サービスの達成度合いを住民の「幸福度」で測っているが、職員が住民のために働いていることを意識するためでもある。感動を客観的な物差しとするのは難しいだろうが、住民の幸せを追求する上ではとても重要な考え方だ。

(2014年5月8日 中日新聞朝刊愛知総合版より)

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