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2014.02.02
「科学者は人類の存続に貢献を」 名大レクチャーで野依教授
名古屋大の野依良治特別教授(75)が登壇した1日の「名古屋大学レクチャー」(中日新聞社共催)。満席の聴衆に「科学技術は国民の信頼があってこそ。科学者には、謙虚に人類の存続に貢献する姿勢が必要だ」と訴えた。講演後は高校生や大学院生らと討論。「今日明日のことだけじゃなく、将来にわたっていい社会を届けることを考えてほしい」と若者にメッセージを送った。(北島忠輔)
■講演の要旨
科学の意義は「われわれはどこから来て、どこへ行くのか」という問いに答えること。それがまっとうな自然観、人生観を醸成する。
自然科学系で、ノーベル賞を受賞した日本人は16人。だが、そのうち5人が海外での研究で受賞している。日本で研究した外国人がノーベル賞を取るようになって、初めて科学立国だ。
20世紀には、電力や自動車、コンピューターなどの技術革新があった。科学技術の恩恵は、人間の長寿命化と外的な能力拡大、経済的な繁栄に現れた。先進国の平均寿命は大幅に延び、空を飛べない人間でも飛行機に乗れば海を越えて外国に行ける。ただ経済性を重視するあまり、不具合も生じている。
貧困からの脱却、医療、エネルギー、食糧、資源の枯渇。こうした問題を解決するためには、科学技術が必要になる。軍事や経済力だけでは、人類は生きていけない。
若い人には考えてほしい。恩恵を受けてきた人たちが、科学のマイナス面の責任を回避している。東日本大震災で、科学者の責任の不徹底さが露呈した。
今の状況を招いた政治、行政、経済界、教育、研究者に猛省を促したい。今のままでは人類社会の存続はあり得ない。多くの才能を集めて新しい知を創らないといけない。
今世紀を主導する若い人は、自らの文化に誇りを持ちながら、多様な価値を持つ多国籍集団を束ねる能力が必要になる。しっかりと準備をしてほしい。
(2014年2月2日 中日新聞朝刊県内総合版より)
■講演の要旨
科学の意義は「われわれはどこから来て、どこへ行くのか」という問いに答えること。それがまっとうな自然観、人生観を醸成する。
自然科学系で、ノーベル賞を受賞した日本人は16人。だが、そのうち5人が海外での研究で受賞している。日本で研究した外国人がノーベル賞を取るようになって、初めて科学立国だ。
20世紀には、電力や自動車、コンピューターなどの技術革新があった。科学技術の恩恵は、人間の長寿命化と外的な能力拡大、経済的な繁栄に現れた。先進国の平均寿命は大幅に延び、空を飛べない人間でも飛行機に乗れば海を越えて外国に行ける。ただ経済性を重視するあまり、不具合も生じている。
貧困からの脱却、医療、エネルギー、食糧、資源の枯渇。こうした問題を解決するためには、科学技術が必要になる。軍事や経済力だけでは、人類は生きていけない。
若い人には考えてほしい。恩恵を受けてきた人たちが、科学のマイナス面の責任を回避している。東日本大震災で、科学者の責任の不徹底さが露呈した。
今の状況を招いた政治、行政、経済界、教育、研究者に猛省を促したい。今のままでは人類社会の存続はあり得ない。多くの才能を集めて新しい知を創らないといけない。
今世紀を主導する若い人は、自らの文化に誇りを持ちながら、多様な価値を持つ多国籍集団を束ねる能力が必要になる。しっかりと準備をしてほしい。
(2014年2月2日 中日新聞朝刊県内総合版より)