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中日新聞掲載の大学記事

2013.06.25

対人関係苦手な発達障害者 似たタイプと共感しやすい?

■福井、金沢大など読解力調べ確認 支援に役立つ可能性

 他人の気持ちを察することが苦手とされる発達障害の人が、自分とよく似たタイプの人の考えや行動については理解度が高いことを、京都大などの研究チームが実験で確かめた。発達障害の人々の支援に役立つ可能性のある成果で、英科学誌の電子版に24日発表した。

 京大、福井大、金沢大のチームの研究。小坂浩隆・福井大特命准教授(児童精神医学)らが、発達障害の一種の自閉症スペクトラム障害(ASD)などの17〜40歳の18人を対象に実験した。独特の「こだわり」があったり、対人関係が苦手なASDの主人公が登場する物語を12話読ませ、読解力や記憶力を調べた。

 物語は「考古学を専攻し、ピラミッドの調査に行ったが、現地で奇妙な岩を発見。ピラミッドではなく岩に夢中になった」などの内容。その後、物語の内容と合う文か、合わない文のどちらかを読ませた。文が物語と合っているかどうかを尋ね、正誤を判断するまでの時間を比べた。

 その結果、内容と合う文を理解するまでの時間は平均3.4秒で、合わない文の3.8秒より0.4秒速かった。ASDではない主人公の物語を読んだ場合は、内容と合うかどうかによって、文を理解する速さに差はなかった。このため、自分とよく似たASDの人が主人公の物語をより深く理解し、内容と合う文に速く反応できたと考えられるという。

 米田英嗣・京大特定准教授(認知心理学)は「ASDの人は共感性に乏しいといわれるが、似た傾向のある他者には共感できる可能性がある。同じ傾向のある人が支援者となる方が、互いに理解が深まっていいかもしれない」と話した。

【自閉症スペクトラム障害(ASD)】 対人関係をうまく築けないなど、社会生活に問題が出る発達障害の一種。重い自閉症から、知的障害を伴わないアスペルガー症候群などまで幅広い範囲を含み、各症状を別々ではなく相互に関連、連続するものと捉える。

(2013年6月25日 中日新聞朝刊29面より)
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