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中日新聞掲載の大学記事

2012.05.30

名大院グループ がん細胞転移仕組み解明

■胃や前立腺 タンパク質が促進

 胃がんや前立腺がんの転移を引き起こすタンパク質の働きを、名古屋大大学院医学系研究科の高岸麻紀研究員や高橋雅英教授らのグループが解明した。英科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」電子版に29日、発表した。がん細胞が他の組織へ移り、広がる仕組みが明らかになり、がんの進行や転移を抑える治療法の開発につながると期待される。

 タンパク質「ウィント」は、胃がんや前立腺がんを動かし、周囲に転移させることが分かっていたが、そのメカニズムは分かっていなかった。

 グループは、がん細胞の活性化に関わるタンパク質と構造が良く似た「デイプル」というタンパク質に着目した。

 培養細胞の実験で、デイプルが多い細胞では、特定のタンパク質と酵素の結合が促され、細胞は突起を伸ばした方向へ浸潤した。デイプルが少ない細胞では、タンパク質と酵素の結合は抑えられ、細胞は浸潤しにくくなった。ウィントはデイプルを刺激して結合を促進する。

 また、マウスの実験では、デイプルが正常な細胞移動を促し、皮膚の傷口の治癒に働くことも見つけた。

 高岸研究員は「デイプルの機能を抑えれば、がんの転移を抑制できる可能性がある。やけどなどの治療にもつながる大きな発見だ」と話している。

(2012年5月30日 中日新聞朝刊1面より)

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