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2012.03.21
苦悩、希望…被災者の声 2カ所で震災シンポ 何かが進んでいる
東日本大震災から1年が過ぎ、あらためて被災地の現状を知り、津波の教訓や支援を考えるシンポジウムが20日、市内の2カ所で開かれた。被災者や現地でボランティアをした人が意見を述べ合い、関心を持ち続けることの大切さを訴えた。(丸田稔之、日下部弘太)
■東区のYMCA 不安言い出せない人も
東区の名古屋YMCA(キリスト教青年会)では、福島市で「市民放射能測定所」を運営している丹治宏大さん(39)は「野菜を食べていいかなど常に選択を迫られる」と生活の苦しみを説明。原発事故で愛西市にある妻の実家に妻子を避難させた際の心境を「二度と会えないかもしれないと思った」と振り返った。
福島県白河市の竹佐古(たけさこ)真希さん(42)は「住民間でも感受性の違いがあり、周りに遠慮して放射能への不安を言い出せない人もいる」と話した。
宮城県内でボランティアをしたYMCA会員の若者たちも報告。「一度現地に行くと意識が変わる」「今回の震災を私たちが教訓にして、備えをすべきだ」などと訴えた。
■千種の市大 家全壊、落ち込んだが
市立大北千種キャンパス(千種区)では、「生と命の街へ」と題して開かれた。同大学院芸術工学研究科環境デザイン研究所主催、中日新聞社など後援。
宮城県気仙沼市のリアス・アーク美術館学芸員山内宏泰さんは、震災から1年が過ぎ、産業や経済の復興ばかりに目が向けられていると問題を提起。「防潮堤や建物のかさ上げなどハード面を整備しても、津波への防災、減災教育を充実させなければ、悲劇を繰り返す」と主張した。
処理が進まないがれきについては「何の疑いも持たずにがれきという言葉が使われている」と苦悩を吐露。すべてのものに被災者の記憶や思い出が宿っているとして、「1つ1つ大切にとむらってあげたい」と受け入れに理解を求めた。
釜石トライアスロン協会(岩手県釜石市)理事の坂下透さんは築2年の自宅が全壊し、知人宅や避難所で生活。市役所に勤務し、激務で精神的に落ち込んだ体験を打ち明けた。
その教訓として、「日記を付けると、何かが進んでいることを確認できる」と説明した。趣味のトライアスロンを通じ、被災地以外の人たちともふれ合った。「いたわりの言葉をかけてもらうと、心の輪郭を保つことができる」と話した。
シンポジウムは名市大の久野紀光准教授ら全国の著名な建築家も登壇、場内は140人の聴衆で埋まった。
(2012年3月21日 中日新聞朝刊市民版より)
■東区のYMCA 不安言い出せない人も
東区の名古屋YMCA(キリスト教青年会)では、福島市で「市民放射能測定所」を運営している丹治宏大さん(39)は「野菜を食べていいかなど常に選択を迫られる」と生活の苦しみを説明。原発事故で愛西市にある妻の実家に妻子を避難させた際の心境を「二度と会えないかもしれないと思った」と振り返った。
福島県白河市の竹佐古(たけさこ)真希さん(42)は「住民間でも感受性の違いがあり、周りに遠慮して放射能への不安を言い出せない人もいる」と話した。
宮城県内でボランティアをしたYMCA会員の若者たちも報告。「一度現地に行くと意識が変わる」「今回の震災を私たちが教訓にして、備えをすべきだ」などと訴えた。
■千種の市大 家全壊、落ち込んだが
市立大北千種キャンパス(千種区)では、「生と命の街へ」と題して開かれた。同大学院芸術工学研究科環境デザイン研究所主催、中日新聞社など後援。
宮城県気仙沼市のリアス・アーク美術館学芸員山内宏泰さんは、震災から1年が過ぎ、産業や経済の復興ばかりに目が向けられていると問題を提起。「防潮堤や建物のかさ上げなどハード面を整備しても、津波への防災、減災教育を充実させなければ、悲劇を繰り返す」と主張した。
処理が進まないがれきについては「何の疑いも持たずにがれきという言葉が使われている」と苦悩を吐露。すべてのものに被災者の記憶や思い出が宿っているとして、「1つ1つ大切にとむらってあげたい」と受け入れに理解を求めた。
釜石トライアスロン協会(岩手県釜石市)理事の坂下透さんは築2年の自宅が全壊し、知人宅や避難所で生活。市役所に勤務し、激務で精神的に落ち込んだ体験を打ち明けた。
その教訓として、「日記を付けると、何かが進んでいることを確認できる」と説明した。趣味のトライアスロンを通じ、被災地以外の人たちともふれ合った。「いたわりの言葉をかけてもらうと、心の輪郭を保つことができる」と話した。
シンポジウムは名市大の久野紀光准教授ら全国の著名な建築家も登壇、場内は140人の聴衆で埋まった。
(2012年3月21日 中日新聞朝刊市民版より)