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中日新聞掲載の大学記事

2012.03.15

耳不自由な女性 ろう学校教諭に 名院大で卒業式

■音ない世界 英語伝える

 耳が不自由ながら英語の教員免許を取得した名古屋学院大外国語学部の藤原美里さん(23)=名古屋市中川区=が15日、熱田区の名古屋国際会議場で卒業式を迎えた。藤原さんは4月から愛知県立名古屋ろう学校(千種区)の教壇に立ち、同じく耳が聞こえない子供たちと向き合って、言葉の世界を広げていく役割を担う。(沢田千秋)
 
 はかま姿で髪をアップにした華やかな女子学生が多い中、ピンク色のシャツにダークグレーのパンツスーツで式に臨んだ。「心がピリっと引き締まるのでスーツが好き」。式の内容はすべて手話で訳された。木船久雄学長の「人生を変えるのは変化をいとわない勇気」という式辞に、背筋を伸ばし、うなずいた。
 
 入学後、「耳が聞こえない学生は自分だけ。他の学生と同じように学びたい」と大学に要望した。大学側は藤原さんに代わって講義の内容を記録する「ノートテイカー」制度を初めて導入。藤原さんは「協力してくれる学生を探すのが一番大変だった。でも、それ以外にハンディを感じたことはない」と振り返る。

■発音猛特訓し免許取得

 大学3年の時、耳が不自由な英語教師と出会ったことで「聞こえない子供たちに英語のおもしろさを伝えたい」と、教職を志した。4年間で必要単位を満了したが、卒業を1年延期し、教員免許取得を目指した。
 
 「とても優秀で、自分に障害があることをほとんど意識していないのでは」。大学関係者にそう言わしめる藤原さん。英語の手話を覚えると同時に、発音も猛特訓した。わずかに出る声で単語を発し、正しい発音ができるまで講師がマンツーマンで指導。地道な努力を重ね、念願の教員免許試験に合格した。
 
 「耳が聞こえない自分だからこそ、ろう学校の生徒と同じ立場に立ち、一緒に歩みたい」と夢を語る。「耳が聞こえなくても、伝えようという気持ちが強ければ英語も必ず通じるはず」と信じている。
 
 式の後、流ちょうな英語で自己紹介してもらった。「My name is Misato Fujiwara. I love English!」。晴れの門出、照れの交じった満面の笑みがはじけた。

(2012年3月15日 中日新聞夕刊11面より)
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