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2010.12.13
静岡文化芸術大 ミュージカル自主制作に挑戦 プロ結集 学生に舞台指南
■元プロデューサー 永井聡子講師が企画
静岡文化芸術大(浜松市中区)が、第一線で活躍するプロが手掛ける新作ミュージカルを初めて自主制作。プロデューサー志望の学生たちが制作スタッフとして現場に密着し“秘伝”を学ぶとともに、学園ミュージカルの域を超えたプロ仕様の舞台発信に挑んでいる。 (長谷義隆)
17、18の両日、同大講堂で上演されるミュージカル・ドラマ「いとしのクレメンタイン」(1幕13場)。愛知県知立市文化会館の元チーフプロデューサーとして現場経験豊かな永井聡子講師が企画。永井講師は「アートを社会に橋渡しする人材を育てるには、実践で学ぶのが大事」と提案し、開学10周年の目玉事業の制作者となった。
同大は実技教育がない異色の芸術系大学。アートマネジメントを学ぶ芸術文化学科を中心に、学生52人が参加。ことし3月から台本の読み込みに始まり、演出助手、衣装、大道具、宣伝など10チームに分かれ舞台制作に携わっている。
「商業公演の半額程度」の低予算だが、趣旨に賛同して第一線で活躍するベテランの面々が応じた。台本・演出は、NHK大河ドラマや音楽劇などを手掛ける伊豫田(いよだ)静弘。88歳の現在も国際的に活動する舞台美術の朝倉摂、ことし紫綬褒章を受けた舞台照明の服部基も参加している。
「学内で舞台創造しているんだ、という熱気を大学全体に染み渡らせたい」(永井講師)と、あえてミュージカル上演には不向きな講堂を会場にした。
■現場から学ぶ「得難い経験」
通常、部外者には見せない舞台制作の過程もすべて授業として公開。この日は、出演者の田中利花と戸井勝海が初めて浜松入り。演出家の指示を聞きつつ、役づくりを深めていく台本読み合わせが始まった。演出指示を克明にメモをしていた芸術文化学科2年の鈴木崇さん(19)は「舞台の裏の裏に立ち合うなんて、得難い経験。次のけいこに間に合うよう台本の修正版を作ります」と目を輝かせていた。
演出の伊豫田は「専門性のある強みだね。学生がみんないちず、一生懸命。プロと学生の共同制作のこの舞台を、学内上演するだけではもったいない。名古屋や東京でもやりたいなあ」と話すと、永井講師も「初演を成功させ次の展開に弾みをつけたい」と応じた。
■「いとしのクレメンタイン」
1950年代、吹雪に閉じ込められた北海道のナイトクラブ。奇妙な巡り合わせでステージに立ったジュディ(田中利花)とキンちゃん(戸井勝海)の歌声に、無人の客席からすすり泣く声。戦争の傷が癒えない2人の過去が浮かび上がる。入場料3000、1500円。(電)053(457)6446=静岡文化芸術大
(写真)学生たちの視線を浴び、ミュージカルのけいこをする(左から)戸井勝海、田中利花と演出の伊豫田静弘=浜松市の静岡文化芸術大・講堂で
(2010年12月13日 中日新聞夕刊7面より)
静岡文化芸術大(浜松市中区)が、第一線で活躍するプロが手掛ける新作ミュージカルを初めて自主制作。プロデューサー志望の学生たちが制作スタッフとして現場に密着し“秘伝”を学ぶとともに、学園ミュージカルの域を超えたプロ仕様の舞台発信に挑んでいる。 (長谷義隆)
17、18の両日、同大講堂で上演されるミュージカル・ドラマ「いとしのクレメンタイン」(1幕13場)。愛知県知立市文化会館の元チーフプロデューサーとして現場経験豊かな永井聡子講師が企画。永井講師は「アートを社会に橋渡しする人材を育てるには、実践で学ぶのが大事」と提案し、開学10周年の目玉事業の制作者となった。
同大は実技教育がない異色の芸術系大学。アートマネジメントを学ぶ芸術文化学科を中心に、学生52人が参加。ことし3月から台本の読み込みに始まり、演出助手、衣装、大道具、宣伝など10チームに分かれ舞台制作に携わっている。
「商業公演の半額程度」の低予算だが、趣旨に賛同して第一線で活躍するベテランの面々が応じた。台本・演出は、NHK大河ドラマや音楽劇などを手掛ける伊豫田(いよだ)静弘。88歳の現在も国際的に活動する舞台美術の朝倉摂、ことし紫綬褒章を受けた舞台照明の服部基も参加している。
「学内で舞台創造しているんだ、という熱気を大学全体に染み渡らせたい」(永井講師)と、あえてミュージカル上演には不向きな講堂を会場にした。
■現場から学ぶ「得難い経験」
通常、部外者には見せない舞台制作の過程もすべて授業として公開。この日は、出演者の田中利花と戸井勝海が初めて浜松入り。演出家の指示を聞きつつ、役づくりを深めていく台本読み合わせが始まった。演出指示を克明にメモをしていた芸術文化学科2年の鈴木崇さん(19)は「舞台の裏の裏に立ち合うなんて、得難い経験。次のけいこに間に合うよう台本の修正版を作ります」と目を輝かせていた。
演出の伊豫田は「専門性のある強みだね。学生がみんないちず、一生懸命。プロと学生の共同制作のこの舞台を、学内上演するだけではもったいない。名古屋や東京でもやりたいなあ」と話すと、永井講師も「初演を成功させ次の展開に弾みをつけたい」と応じた。
■「いとしのクレメンタイン」
1950年代、吹雪に閉じ込められた北海道のナイトクラブ。奇妙な巡り合わせでステージに立ったジュディ(田中利花)とキンちゃん(戸井勝海)の歌声に、無人の客席からすすり泣く声。戦争の傷が癒えない2人の過去が浮かび上がる。入場料3000、1500円。(電)053(457)6446=静岡文化芸術大
(写真)学生たちの視線を浴び、ミュージカルのけいこをする(左から)戸井勝海、田中利花と演出の伊豫田静弘=浜松市の静岡文化芸術大・講堂で
(2010年12月13日 中日新聞夕刊7面より)