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中日新聞掲載の大学記事

2010.12.14

イトヨの遺伝子 環境で変化 岐阜経済大教授ら解明

■ホルモン分泌の“進化論”

 岐阜経済大(岐阜県大垣市)の森誠一教授らのグループは、トゲウオ科の魚イトヨの研究で、生息環境の違いがホルモン分泌の遺伝子に変化を与えていることを発見した。生物多様化の過程で、行動や形態だけでなく、体内にあるホルモンでも進化が起きる証拠として米科学誌「カレントバイオロジー」電子版に発表した。

 イトヨはもともと川で生まれて海で育ち、産卵期に再び川へ戻る遡河(そか)型だが、一生を川で過ごす陸封型が1万〜30万年前に出現したとされる。

 森教授らは、北海道や岐阜県、北米など15地点でイトヨを採集。遡河型と陸封型で運動や代謝にかかわる甲状腺ホルモンの量を比較したところ、陸封型に少なく、ホルモン分泌に関係する遺伝子配列に違いがあることを突き止めた。

 森教授らは、海まで往復する必要のなくなった陸封型のイトヨが、運動にかかわるホルモンの分泌量を減らすよう進化した、と説明。さらに、代謝量を減らすことで海に比べてえさが少ない川でも体力を保てるようになったとみている。別の研究者によるサケの研究などからは、甲状腺ホルモンが生まれた川を見分けるための役割を果たしていた可能性もあるという。

 森教授は、これまでは生物の外見や行動から進化が語られてきたことに触れた上で「今回の発見でホルモンが生物の多様化を担う重要な鍵を握っている可能性があることが分かった」と話している。研究は森教授と東北大大学院の北野潤助教、米国の研究者らが合同で取り組んだ。

(2010年12月14日 中日新聞朝刊31面より)
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