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学生活動  2025.09.02

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東山のゾウ 歩みたどる 椙山女学園大4年生 ドキュメンタリー映像制作

作品を制作した(前列左から)徳毛さん、石川さんら学生たち=千種区の椙山女学園大で

作品を制作した(前列左から)徳毛さん、石川さんら学生たち=千種区の椙山女学園大で

 椙山女学園大(千種区)でジャーナリズムを学ぶ4年生が、近隣にある東山動植物園のアジアゾウを題材にしたドキュメンタリー映像「戦後80年 東山ゾウ物語」を制作した。戦時中、多くの動物が命を絶たれる中でも守られたことや、2013年の出産成功など、愛され続けるアジアゾウの歴史をたどる内容で「身近な動物園から命の尊さを未来に伝えたい」との願いを込める。(片岡典子)

■「命の尊さ 未来に伝えたい」

 制作したのは、栃窪優二特任教授が指導するゼミの10人。映像で社会的な情報の発信に取り組むゼミでは、10年ごろから東山動植物園と共同で多くの作品を手がけてきた。

 太平洋戦争中は「空襲でおりが壊れて逃げたら危険だ」と、全国の動物園で猛獣やゾウなどが殺処分された。東山動植物園でも、ライオンやクマなどが殺され、食料不足による飢えで死ぬ動物も相次いだ。一方、アジアゾウの「マカニー」と「エルド」は生き延びた。

 25分間の作品では、戦時中、園長らが軍に対するゾウの助命嘆願や餌の確保に奔走したこと、戦後にはゾウを一目見ようと全国から大勢の子どもたちが来園したことなどを紹介。さらに、13年に園では初めてアジアゾウの出産に成功したときの貴重な映像も、過去の作品を再編集して加えた。

 頭を悩ませたのは歴史の紹介が中心の作品に、どのように「現在、未来へつなげる」というメッセージを持たせるか。ゼミで話し合った結果、作品のところどころに、大学付属のこども園で、子どもたちがマカニーとエルドに関する絵本の読み聞かせに聞き入る映像を挟み込むことにした。現在のアジアゾウの親子の様子や、開園時の造りを残すライオン舎の映像なども新たに撮影した。

 「戦後80年」をきっかけに、春休みから制作に取り組んできた学生たち。前提となる戦争の知識を得ようと、学内の資料館で、自分たちの先輩が学徒動員中に空襲の犠牲になった歴史を学んだり、戦争と平和の資料館「ピースあいち」(名東区)で展示品の解説を受けたりした。

 ディレクターを務めた徳毛琴音さん(22)は「私たちも戦争のことを知らなかったからこそ見る人と同じ立場で作品をつくることができた」と振り返る。同じくディレクターの石川莉彩さん(21)は「制作を経て、東山動植物園を『楽しい場所』だけにとどまらない目線で見るようになった。作品が、見る人にとっても戦争を考えるきっかけになったら」と話す。

 「戦後80年 東山ゾウ物語」は大学のYouTubeチャンネルなどで視聴できる。

(2025年9月2日 中日新聞朝刊市民版より)
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