進学ナビ

HOME > 中日新聞掲載の大学記事 > お知らせ

中日新聞掲載の大学記事

お知らせ  2024.01.06

「おうちできた」子ども歓声 名工大開発 インスタントハウス

輪島中学校の体育館に設営されたインスタントハウス=5日、石川県輪島市で(加藤壮一郎撮影)

輪島中学校の体育館に設営されたインスタントハウス=5日、石川県輪島市で(加藤壮一郎撮影)

■輪島の避難所 段ボール製、15分で完成

 能登半島地震で被災した石川県輪島市の避難所で、名古屋工業大が開発し、断熱性などに優れた段ボール製の簡易住宅「インスタントハウス」が設営されている。発生間もなく避難所に持ち込んだ北川啓介教授(49)=建築設計=が、東日本大震災をきっかけに開発を進めてきた。

 子ども連れの家族ら約800人が避難している輪島中学校。5日、窓ガラスが割れて冷たい風が入る体育館に高さ2.5メートルの茶色い鉛筆のような「家」が6棟並んでいた。女性の着替えや子どものおむつ交換の場として使われていた。

 子どもたちにも人気で、暖かいハウス内で遊んだり、段ボールに絵を描いたり。京都市から実家に帰省していた会社員女性(27)は「すごくありがたい。ハウス内も広くて落ち着ける」と歓迎する。

 北川教授は2日、ハウス10棟分の段ボールを車に積み込み、名工大を出発。輪島市職員らと調整し「屋内でも寒い」という輪島中に設営することにした。

 ハウスは幅1メートル、高さ1.8メートルの段ボールなどのパーツを組み合わせて15分で造れる。設置場所や避難者の要望に応じて、四角柱や八角柱といった形状を変えたりつなげたり、窓や扉を開けたりできる。断熱性や遮音性に優れている。

 北川教授は2011年の東日本大震災で避難所を調査した際、小学生に「大学の先生なら早く家を建ててよ」と言われ、簡易住宅の研究を始めた。16年、シートを空気で膨らませて、ウレタン材を吹き付ける形のハウスを開発。昨年のトルコ・シリア地震で被災したトルコ南部などに届けた。

 今回の段ボール製は昨年12月に名古屋市であった防災用品展で発表したばかりの新製品だった。輪島中では、家を失った子どもたちと一緒にハウスを設営し、「おうちができた」と喜ぶ様子に涙が出た。

 北川教授は段ボール製造業者にも協力してもらい、来週にも再び現地へ向かう予定で、今後は中長期の避難生活に備えて、ウレタン材のハウスも用意する。「支援は食べ物だけでなく、住まいや衣類も必要になる。できることから支援したい」と話した。

 段ボール製の屋内用インスタントハウスは9日に販売を始める。人道支援や社会貢献を目的としているため、販売価格は1万2千円としている。問い合わせは北川教授=kitagawa@nitech.ac.jp=へ。 (加藤壮一郎、鈴木凜平)

(2024年1月6日 中日新聞夕刊1面より)

戻る < 一覧に戻る > 次へ