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中日新聞掲載の大学記事

お知らせ  2020.09.04

胃がん転移促進のタンパク質を発見 名大チーム

胃がんの転移とタンパク質「NPTXR」のイメージ

胃がんの転移とタンパク質「NPTXR」のイメージ

 転移した胃がんの細胞内で増加した特定のタンパク質を取り除くなどすることで転移を抑えることに成功したと、名古屋大の研究グループが発表した。従来のがん治療では注目されていなかったタンパク質の影響を確認したことになり、新しい治療薬の開発につながる可能性があるという。

 名大の小寺泰弘教授(消化器外科学)や神田光郎講師らの研究チームは、胃がん患者16人のがん細胞を採取し分析。転移したがんの細胞内でタンパク質「NPTXR」の量が、転移しないがん細胞と比べ平均して10倍以上に増えていることを確認した。

 培養した人の転移胃がん細胞からNPTXRを取り除くと、細胞が増殖する能力などが低下することを突き止めた。NPTXRをマウスに投与して新たに作り出した抗体を別のマウスに与えると、転移の進行を遅らせることができたほか、まったく転移しないマウスもあった。成果は米国の専門誌電子版に掲載された。

 NPTXRは主に神経細胞に存在し情報伝達の役割を果たしているという。神田講師は「がんでは注目されていなかったが、タンパク質や化合物などの刺激物質とつながることでがん細胞が活発化し、転移を引き起こしている」とする。

 チームでは胃がん以外の乳がんや膵臓(すいぞう)がんなどでも、転移時にNPTXRが増加していることを確認。「ほかのがんでも、有効な治療方法になる可能性がある。人への投与ができるよう、今後も研究を続けたい」と話した。(白名正和)

(2020年9月4日 中日新聞朝刊29面より)

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