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お知らせ  2019.01.23

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ニホンカモシカ 山頂奪われ… 鈴鹿山脈の保護地域 異変 ニホンジカ進出で麓へ

 三重と滋賀両県の鈴鹿山脈に広がる国特別天然記念物ニホンカモシカの保護地域で、ニホンカモシカが本来生息する標高の高い地域から標高の低い周辺部に追いやられていることが、専門家の調査で分かった。ニホンジカの進出が背景にあるとみられる。麓に下りることで耐性を持たない病原菌に感染したり、交通事故に遭ったりするリスクがあり、専門家は対策の必要性を訴える。(西川拓)

 四日市大(三重県四日市市)環境情報学部の橋本幸彦准教授とNPO法人「三重県自然環境保全センター」理事長の森豊さんが2014〜15年度、保護地域の一部で生息調査を実施した。自動撮影装置を14年度は4台、15年度は9台設置して定点観察したり、目視確認したりした。

 自動撮影装置による調査によると、保護地域の中心に当たる鈴鹿山脈の御在所岳山頂周辺(同県菰野町、標高1000〜1200メートル)ではニホンカモシカがまったく確認できなかったが、標高が低く地域の端に当たる湯の山温泉街周辺(同町、標高400〜600メートル)では計23件確認された。

 森さんによると、1970年代には尾根近くで目撃例が多く山麓ではなかった。2010年代には尾根近くの目撃情報が減り、山麓では交通事故などにより死ぬ事例も報告されるようになった。県教委などの調査によると、鈴鹿山脈全体の生息数も減少している。

 一方、撮影装置の調査でニホンジカは御在所岳山頂付近で計660件、湯の山温泉街付近で計340件が確認された。

 森さんによると、群れで暮らすニホンジカに対し、臆病な性格のニホンカモシカは群れをつくらない。こうしたことから森さんは、餌でも競合するニホンジカが標高の高い地域に進出したことで、ニホンカモシカが「下山」したとみている。山麓付近でニホンカモシカ、ニホンジカ双方が確認された理由は分かっていない。

 橋本准教授は「ニホンカモシカは本来高い標高で暮らす。保護地域が空洞化しないように、元々住んでいた場所に戻らせる施策が必要だ」と指摘する。森さんらは、18年度も10月からカメラを10台ほど設置して調査を続けている。

■ニホンカモシカと保護地域

 ウシ科の野生動物で日本の固有種。本州と四国、九州の山間部に生息し木の葉や新芽を好んで食べる。首をかしげてたたずむ姿から「山の哲学者」と呼ばれ、三重県や長野県では県の獣に指定されている。

 1955年に国の特別天然記念物に指定されたが、70〜80年代に個体数が増加し、林業被害が深刻に。個体数調整を求める林野庁と天然記念物指定した文化庁、環境庁(当時)の3者が協議し、保護地域の設定が決まった。

 保護地域では生息環境を保全する一方、地域外では状況に応じて個体数調整を認める。全国15カ所の設置が計画された。鈴鹿山脈では83年、三重と滋賀の両県にまたがる標高200〜1000メートルの地帯約1万4000ヘクタールに設けた。

(2019年1月23日 中日新聞朝刊29面より)

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