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中日新聞掲載の大学記事

2017.08.01

女将直伝 旅館で働く魅力 担い手確保 大学で県出前講座 高山の有巣さん ひと肌

 県内で旅館やホテルの仕事に就く若者を増やそうと、女将(おかみ)が一肌脱いでいる。各地の大学に出向き、宿泊施設で働く魅力をアピールする出前講座を始めた。県が本年度から企画した全国でも珍しい取り組みで、主に飛騨地方の女将に依頼し、現場の声を直接学生に届けて担い手を確保する。(近藤統義)

 「何時間もかけてお客さんが会いに来てくれる。芸能人じゃないのに私のファンがいるんですよ」。岐阜市の岐阜女子大で6月、文化創造学部で観光を学ぶ1年生約30人を前に、高山市の旅館「本陣平野屋」の若女将有巣沙織さん(28)が着物姿で仕事の魅力を語った。

 旅館にはフロントや調理場のほか、予約係や布団敷きなどさまざまな職種があると紹介。夜勤スタッフがいるため多くの従業員は午後に出勤し、「子どもが学校に行っている間だけ、といった自分に合った働き方ができる」と力説した。

 学生たちからは「旅館のイメージが変わった」と好反応。下坂里咲さん(18)は「朝から晩まで働き、料理を運ぶ力仕事で自分には難しいと思っていた。女性でも柔軟に働けると分かり、就職先の選択肢に入れたい」と話した。

 県が人材獲得に熱を入れる背景には、旅行者の急増がある。県内を訪れた観光客は2015年、初めて7000万人を突破。外国人宿泊客も93万人に上り、5年前の4倍に。受け皿となる宿泊施設から、担い手不足の窮状が届き始めた。

 高山市によると、市内の一部の宿泊施設では調理や接客の人手不足で、宴会の予約を制限するケースも。市は今年2月、地元高校への観光関連学科の新設を県教委に要望した。有巣さんは新卒採用は順調としながら「おもてなしを重視すると、人の力がまだ足りないと感じる」と漏らす。

 県は、出前講座の開催を5月の大阪成蹊短大(大阪市)に続き、東京や名古屋の大学でも検討している。ほかに旅館で就業体験するインターンシップの受け入れや、就職説明会へ旅館の共同ブースを出展することも予定し、担当者は「各国から観光客が訪れる岐阜は、国際的に活躍できるやりがいある舞台だと伝えていきたい」と意気込んでいる。

(2017年8月1日 中日新聞朝刊岐阜県版より)
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