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2009.10.14
大河ドラマ「天地人」主人公 直江兼続の密状発見
■愛知文教大の増田教授確認 会津武将に軍事情報
戦国大名上杉景勝の重臣でNHK大河ドラマ「天地人」の主人公となった武将直江兼続が会津葦名(あしな)家の武将に軍事情報を伝えたとみられる「密状」が、見つかった。古文書に詳しい愛知文教大副学長の増田孝教授は「兼続の書状が見つかることがまれな上、戦国武将の密状が出てくるのも珍しい」としており、戦乱の時代を生き抜いた知将兼続の実像が垣間見える貴重な資料として注目を集めそうだ。
研究者の間で存在は知られていたが所在が分からなかった。東京の古書店が長年保管していたものを、増田教授らが確認した。
「屋代者令逆心候(屋代という者が謀反を起こしました)」などと報告した内容で、上杉の家臣でありながら徳川家康に内通した武将屋代秀正を指したとみられる。兼続はこの後、屋代討伐に向かっており「まもなく出陣しますので、その際はよろしくお願いします」と葦名側に自軍の動きを伝える記述もあった。
密状は「卯月(うづき)(4月)13日 兼続」と末尾に記され、兼続の花押があった。増田教授によると「右筆(ゆうひつ)」と呼ばれる秘書役に書かせた文書で、安土桃山時代の1584年に、会津(現福島県)の大名葦名家の家臣にあてたものとみられる。上杉家は越後(現新潟県)の春日山城を拠点としていた。
当時、兼続は20代半ば。2年前に本能寺の変があり、豊臣秀吉が台頭する中で、景勝の腹心として各国の戦国大名としのぎを削っていた。
密状は文章に沿って縦に裁断された跡があり、掛け軸に張り合わされていた。
■「右筆」筆跡も確か
増田孝・愛知文教大教授(日本書籍史学)の話 密状は、東北の戦国武将が一般的に用いる「雁皮(がんぴ)紙」で書かれており、秘書役の「右筆」の筆跡も確かで、直江兼続のものに間違いない。軍事的な重要情報だっただけに、一部が第三者の手に渡ったときも全体の内容が分からないように、細かく裁断した「こより文」を使者に隠し持たせたのかもしれない。
直江兼続 (1560〜1619年)安土桃山時代から江戸時代初期に活躍した武将。初代米沢藩主上杉景勝の重臣で、景勝が徳川家康から謀反の疑いを掛けられた際、「直江状」と呼ばれる反論文書を家康側に送った。文武両道で知られ、治水などに力を注いで城下町米沢の基盤を築いた。今年のNHK大河ドラマ「天地人」の主人公で、俳優妻夫木聡さんが演じている。
(2009年10月14日 中日新聞夕刊12面より)
戦国大名上杉景勝の重臣でNHK大河ドラマ「天地人」の主人公となった武将直江兼続が会津葦名(あしな)家の武将に軍事情報を伝えたとみられる「密状」が、見つかった。古文書に詳しい愛知文教大副学長の増田孝教授は「兼続の書状が見つかることがまれな上、戦国武将の密状が出てくるのも珍しい」としており、戦乱の時代を生き抜いた知将兼続の実像が垣間見える貴重な資料として注目を集めそうだ。
研究者の間で存在は知られていたが所在が分からなかった。東京の古書店が長年保管していたものを、増田教授らが確認した。
「屋代者令逆心候(屋代という者が謀反を起こしました)」などと報告した内容で、上杉の家臣でありながら徳川家康に内通した武将屋代秀正を指したとみられる。兼続はこの後、屋代討伐に向かっており「まもなく出陣しますので、その際はよろしくお願いします」と葦名側に自軍の動きを伝える記述もあった。
密状は「卯月(うづき)(4月)13日 兼続」と末尾に記され、兼続の花押があった。増田教授によると「右筆(ゆうひつ)」と呼ばれる秘書役に書かせた文書で、安土桃山時代の1584年に、会津(現福島県)の大名葦名家の家臣にあてたものとみられる。上杉家は越後(現新潟県)の春日山城を拠点としていた。
当時、兼続は20代半ば。2年前に本能寺の変があり、豊臣秀吉が台頭する中で、景勝の腹心として各国の戦国大名としのぎを削っていた。
密状は文章に沿って縦に裁断された跡があり、掛け軸に張り合わされていた。
■「右筆」筆跡も確か
増田孝・愛知文教大教授(日本書籍史学)の話 密状は、東北の戦国武将が一般的に用いる「雁皮(がんぴ)紙」で書かれており、秘書役の「右筆」の筆跡も確かで、直江兼続のものに間違いない。軍事的な重要情報だっただけに、一部が第三者の手に渡ったときも全体の内容が分からないように、細かく裁断した「こより文」を使者に隠し持たせたのかもしれない。
直江兼続 (1560〜1619年)安土桃山時代から江戸時代初期に活躍した武将。初代米沢藩主上杉景勝の重臣で、景勝が徳川家康から謀反の疑いを掛けられた際、「直江状」と呼ばれる反論文書を家康側に送った。文武両道で知られ、治水などに力を注いで城下町米沢の基盤を築いた。今年のNHK大河ドラマ「天地人」の主人公で、俳優妻夫木聡さんが演じている。
(2009年10月14日 中日新聞夕刊12面より)