進学ナビ

HOME > 中日新聞掲載の大学記事 > 全て

中日新聞掲載の大学記事

2015.12.12

地酒力 頭皮に潤い 金沢工大と連携 焼酎蒸留かす活用

 吟醸酒の酒かすを使って焼酎を造る際、蒸留後のかすから抽出した保湿成分「α−EG」を配合したシャンプーを、金沢市のシャンプー販売会社「MOYU(モユ)」が金沢工業大と石川県内の酒造会社との連携で開発した。会社によるとこうした方法でつくったシャンプーは全国で初めてという。「地酒の力」で生み出した新商品を14日から石川、富山両県で発売する。(松瀬晴行)

 MOYUは2012年秋に設立。これまで頭皮や髪に潤いを与える加水分解コラーゲンやオレンジ油などの天然アロマ、花から抽出した保湿成分のアスタキサンチンなどを配合したアミノ酸系のシャンプーを開発。会社によると、利用者から「抜け毛が減った」「肌まですべすべになった」などの声が寄せられたという。

 小坂治美社長(51)は、以前化粧品会社で勤務していた際に知った日本酒成分の保湿機能に着目。金沢工業大の尾関健二教授(60)=応用微生物学=が、荒れ肌の解消効果があり、体内でコラーゲンの生産量を増やすα−EGを研究しているのを昨年2月に知り、商品化を働きかけた。

 尾関教授と研究生が酒造会社の協力で研究した結果、焼酎を仕込む際、酒かすに白ぬかと関連酵素を加えて再発酵させると、もろみにα−EGが含まれ、蒸留後のかすにも全量が残ることが分かった。従来の焼酎製造では蒸留後のかすは捨てていた。それを活用し、加水分解コラーゲンの代替にα−EGを配合した。

 金沢市内のメーカーに製造委託して今夏、試作品が完成し、提携する美容室やエステサロン、自然食品店などを通じて約1500人に使ってもらった。会社によると「頭皮のにおいやワイシャツの襟の汚れが少なくなった」(男性)、「髪の根元がふんわりしてきた」(女性)と、反応はいいという。

 小坂社長は「もともと人の肌は潤う力を持っている。その力を引き出すきっかけになれば」と話す。尾関教授は「廃棄費用が必要だった焼酎の蒸留かすを有効活用できたのは大きな成果。α−EGの保湿効果を多くの人に実感してもらえるのでは」と期待する。

 シャンプーは「BE WASH」の名前で、提携している美容室やエステサロンなど約50店で販売。「しっとり」「さっぱり」の2タイプのほか、来春に「さっぱりクール」を発売する。580ミリリットルで、8500円(税別)。問い合わせは、MOYU=電076(225)5611=へ。

【α−EG】 清酒に含まれる糖質の一つ。清酒中では水、エタノール、グルコースに次ぐ4番目の主要構成成分で、0・1〜0・7%程度含まれる。これまでの研究で保湿効果のほか、荒れ肌の改善、肝臓の障害に対する保護効果なども報告されている。

(2015年12月12日 北陸中日新聞朝刊14面より)
  • X

戻る < 一覧に戻る > 次へ