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中日新聞掲載の大学記事

2015.09.16

「短期間で化石化」解明 名大など コンクリートに応用も

 化石を覆うように固まる「ノジュール」という炭酸カルシウムの層が、わずか数週間で形成され化石になる仕組みを、名古屋大博物館の吉田英一教授(環境地質学)らのグループが解明した。人工的に作り出せれば、コンクリートの補修や代替などさまざまな応用が期待できるという。成果は15日付の英電子版科学誌に掲載される。

 ノジュールは球のような形で、直径数センチから2メートルまでさまざまな大きさが確認されている。内部の生物化石を良好な状態で何千万年もの長い間、タイムカプセルのように保存することで知られる。ただ、これまで貝殻のカルシウム分が溶け出し、長時間かけて形成されるなど諸説あり、どのように形成されるかは謎とされてきた。

 吉田教授らは、富山県八尾地域で採掘された2000万年前のツノガイを使い、化石についたノジュールに含まれる炭素を分析したところ、炭素の性質がツノガイの体に含まれる炭素と一致した。海底の土の中で死ぬと体が腐って周囲にじわじわ炭素が拡散し、海水に含まれるカルシウムと反応して固まっていくとみられ、死後の数週から数カ月という短期間で形成されているとはじき出した。

 ノジュールは、ひびが入っても内部にある炭素が海水中のカルシウムと反応し、自動的に修復する性質があるという。吉田教授は「今の建築に使われているコンクリートは、実は長期にわたる安全性がよく分かっていない。既存の建造物のひびを埋める補修や新たに造るトンネルのほか、何万年も地下で保管しなくてはいけない放射性廃棄物の処分にも活用できる可能性がある」と話している。

(2015年9月16日 中日新聞朝刊3面より)

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