体操の世界選手権（１０〜１１月・英グラスゴー）代表選考会を兼ねて１７日に開催されるＮＨＫ杯の公式練習が１５日、東京・国立代々木競技場で行われた。２年ぶり２度目の優勝を狙う女子の寺本明日香（１９）＝中京大＝が、難度の高い技に挑戦することを明かした。今大会で男女計７人の代表が決まる。

　体操ニッポンを背負う重圧が行方不明騒動を起こしていた。３月中旬に左手小指の靱帯（じんたい）を断裂する大けがを負った寺本。完治しないまま出場した３週間前の全日本選手権で「奇跡」の初Ｖ。「やりきった感がでちゃった」。その反動で、燃え尽き症候群に陥ったというのだ。

　半月ほど前のこと。寺本が練習時間になっても現れず、心配した坂本周次コーチ（６０）が母親に確認すると「家は出たんですが…」。友人らにも連絡を入れると、名古屋市西区の練習拠点・レジックスポーツに来ているはず、ということまでは分かった。

　慌てて探すと、レジックスポーツの玄関の外でうずくまったままの寺本を発見。坂本コーチはこう語りかけた。「１９歳で日本の体操界を背負っていることになっちゃったけど…。でも、あなたはこれまでずっと体操を楽しんでやってたじゃない」。原点を思い出させ、気持ちを立て直させた。

　原点回帰で迎える今大会、寺本は持ち点ではトップスタート。それでも「攻めの体操をしたい」と、さらなる高みを見据える。最初の種目の跳馬で世界でも数えるほどしか跳べないという高難度のジャンプに挑む。

　愛知県小牧市で育ち、世界の舞台へ。来年のリオデジャネイロ五輪では、年齢、実力とも代表チームを引っ張る立場になる。身長１４２センチの小柄な体で、女王の重圧と戦う。　（福沢和義）

■湯元「ノーミスで」

　今大会で決まる５人の女子代表に、湯元さくら（１８）が中京大勢として寺本とダブル選出を狙う。「調子はいい。とにかくノーミスでやること」。注目は得意の平均台。反転から後方伸身宙返りで高得点を狙う。この技の成否が代表切符に直結しそうで「特訓してきた」と自信も。

【世界選手権切符】　４月の全日本選手権の得点の半分を持ち点に今大会との合計で順位を決め、男子は既に代表入りした内村を除く上位２人、女子は上位５人が切符を手にする。男子は内村のほか全日本２位の田中佑典（コナミスポーツク）、同３位の加藤凌平（順大）が軸。女子は全日本２位で１７歳の内山由綺（スマイルク）、３位で１５歳の杉原愛子（大阪・梅花高）ら若手が初代表になるかも注目される。

（2015年5月16日　中日スポーツ11面より）