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中日新聞掲載の大学記事

2009.03.21

障害者向け自助具製作 椙山女学園大3年・松本夕季さん

 一週間分の新聞を片手で縛れたらどんなに楽だろう−。障害者のそんな思いに応える自助具を、椙山女学園大生活環境デザイン学科3年の松本夕季さん(21)が製作した。障害者とふれあう中で生まれたアイデアは「役に立つ」と好評。今後は実用化に向けて、さらに改良を重ねていく。

片手で古新聞縛れる

 木箱の両側にある切れ込みにひもを掛け、その上に新聞を重ねて置き、順序通りにひもをフックなどに回していくと、十字に縛られていく。すべて片手で事足りる。

 松本さんは、大学であった自助具による障害者支援活動の講演がきっかけで、脳卒中の障害者支援を進める特定非営利活動法人(NPO法人)「ドリーム」(名古屋市中区)の自助具製作事業に参加した。

 活動を通じて障害のある人たちと会話を交わし、体の半分がまひして動かない人は物を縛るのが困難だと知った。情報を得る新聞や雑誌は不可欠だが、片付けるのは一苦労。その解消にと、簡単に縛ることができる道具作りを思いついた。

 両手で縛る道具はいくつか市販されている。それを参考に、木工所で働く知人に相談しながら、箱に入れる切れ込みの位置を変え、フックの本数を増やすなどした。障害者に試してもらいながら作り、自身でも利き手でない側の手で食事をしたり、ドアを開けたりする生活を体験して、その苦労を製作に反映。4カ月かけて試作品が完成した。

 「こんな道具があるとは知らなかった」「是非使ってみたい」と、製作に協力してくれた障害者の人たちの評判も上々。今後は素材を軽量化し、より機能的にする。

 今回の製作を通じて「私たちが今住んでいる世界は障害者に優しくない環境だと感じた」と松本さん。「見た目の美しさやセンスがデザインだと思っていたが、使う人の立場に立つことが大切だと知った。これからも洗練されたデザインで、個人の身体に合った自助具を作れたら」と目を輝かす。

 ドリームの事業には愛知県内9大学の学生約40人が参加。29日に名古屋市中区のつながれっとNAGOYAで報告会を開き、片手で歯磨き粉を絞ったり、ネクタイを結んだりできる道具など約40点を紹介する。4月以降には希望者への提供も検討している。

(2009年3月20日 中日新聞朝刊二社版より)

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