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中日新聞掲載の大学記事

2014.08.05

マウス実験 「人に役立つ」 「意味ない」論争に反論 藤田保健衛生大教授ら

 人間と体のつくりが違うマウスを使って病気の治療法などを研究することに科学的な意味があるかどうかとの世界的な論争に対し、藤田保健衛生大(愛知県豊明市)の宮川剛教授と自然科学研究機構生理学研究所(同県岡崎市)の高雄啓三特任准教授は、人とマウスの遺伝子の働きは似ており「科学的に意味がある」とする分析結果をまとめた。4日付の米国科学アカデミー紀要に発表した。

 論争の火種は昨年1月に米ハーバード大などの研究チームが発表した論文だ。やけどで炎症が起きたとき人体内で活動する遺伝子約1万3000種について、マウスでも同様に活動しているかどうか調べたところ関連性がなかったと結論。「人とマウスはまったく似ておらず実験は無意味ではないか」と疑問を投げかけ、マウスを利用してきた世界の研究者に衝撃を与えた。

 結論に疑問を持った宮川教授らは、米チームが公表した実験データを独自に分析した。比べる遺伝子を絞り込み、やけどの炎症に直接かかわりそうな約2000種類に限って比べたところ、活動に強い類似性が見つかった。この結果から、炎症を起こす病気では反応は似ており、マウスを使った研究は有効と結論づけた。宮川教授は「米国チームは分析する対象を誤っていた。適切な遺伝子に着目すべきだ」と強調する。

 マウスは飼育が簡単なうえ、遺伝子の99%が人と共通しているとされ、薬の開発や病気の仕組みを調べる実験に多く使われる。科学的な妥当性とは別に、欧米では動物実験を減らす動きも進んでいる。

(2014年8月5日 中日新聞朝刊3面より)
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