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中日新聞掲載の大学記事

2014.07.18

ヨウ素触媒でビタミンE 名大院グループ、不斉合成に成功

 うがい薬や消毒液に使われるヨウ素を使って化学反応を促進する新たな触媒を開発し、ビタミンEや抗がん剤の主要部分を構成する有機化合物を不斉合成することに、名古屋大大学院工学研究科の石原一彰教授(生物機能工学)らのグループが成功した。18日の米科学誌「サイエンス」で発表した。

 不斉合成は、左右対称の化学構造を持つ物質について、有用な側のみをつくり出す技術。名大の野依良治特別教授が成功し、ノーベル化学賞を受賞した。

 石原教授らは2010年、今回同様、ヨウ素化合物を触媒にして医薬品に活用できる「ジヒドロベンゾフラン骨格」という構造を持つ化学物質の不斉合成に成功した。今回はビタミンEや抗がん剤の製造に活用できる「クロマン骨格」を不斉合成するため、使う物質や触媒の化学構造を改良。炭酸カリウムを加えることで、触媒の量を大幅に減らせることも突き止めた。

 従来、クロマン骨格を含む化合物を不斉合成する際に触媒で使われている金属は合成後、有害な物質が残留する恐れがある。ヨウ素はその懸念がないほか、日本が世界2位の産出国で、金属資源の少ない日本にとって今後、触媒としての普及が期待される。石原教授は「より安全で、低コストに不斉合成させることが可能になる」と話している。

(2014年7月18日 中日新聞朝刊3面より)
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