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中日新聞掲載の大学記事

2014.03.09

文学部の意義強調 名大で学者ら公開シンポ

 大学の文学部の役割や社会的な意義について考える名古屋大文学研究科の公開シンポジウム「文学部の逆襲」が8日、千種区の同大文学部で開かれ、約150人が参加した。(梅田歳晴)

 文学は実生活ですぐ役に立つような工学や医学などの学問に比べ、学んだ効果が見えにくい。最近では文学部に人が集まらず、文学部自体が大学から姿を消しつつある。こうした実情に危機感を抱いて企画された。

 シンポでは、多田一臣東京大名誉教授(日本文学)、和田寿弘名古屋大教授(インド文化学)、木俣元一名古屋大教授(西洋美術史)の3人が、それぞれの立場から持論を展開。「文学は人間が生きていく上で、必要不可欠な学問であること」が強調された。

 「『廃虚』としての人文学」をテーマに登壇した木俣教授は、ローマなどヨーロッパの街に歴史や過去の記憶をとどめる廃虚が共存していることを例に挙げ、「廃虚を取り去ってしまえば都市全体が意味を失う。大学の中の『廃虚』が人文学部ではないか」と比喩的に表現した。

 多田名誉教授は「言葉や文字は現実の世界をかたどり、現実とは違う観念の世界をも創り出すことができる」と説明。文学研究を「言葉や文字にもっとも密着した学問」と定義し、言語表現の仕組みを読み解くことが目的の1つだと話した。

 進行役を務めた塩村耕名古屋大教授(近世日本文学)は「先人の言葉に積極的に耳を傾けるのが文学。死者との対話を繰り返すことで、先人の気持ちを知ることができる」と述べた。

(2014年3月9日 中日新聞朝刊市民総合版より)

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