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中日新聞掲載の大学記事

2008.10.19

名大病院が国内初療法 乳がん患者負担軽く

 名古屋大医学部付属病院乳腺・内分泌外科(今井常夫科長)は、早期乳がんの乳房温存手術で、再発予防のための放射線を手術中に患部に直接当てる治療「術中照射」を始めた。乳がん治療では国内で初めての取り組みで、患者の負担軽減や治療効果の向上につながると期待される。30日から名古屋で開かれる日本癌(がん)治療学会で発表する。

手術中放射線を直接照射

 術中照射は乳房部のがんと周囲1センチを切り取った後、その場の病理診断で周囲にがんがないことを確認した上で、他部位への照射を防ぐ防御板を入れ、がんがあった部分を縫合し、皮膚の上からではなく直接放射線を当てる。その後、防御板を外し、患部、皮膚を縫い合わせる。

 名大では術中照射の適用基準を50歳以上、2.5センチまでの1カ所だけの早期乳がんで乳房温存手術を希望する場合などにしている。照射する総放射線量は従来の半分以下で済むという。

 従来は早期乳がんの温存手術の場合、術後ほぼ毎日計25日間かけて放射線を照射するのが標準で、やけどなどの副作用も多く、通院の負担も大きかった。

 名大では昨年12月から安全性と照射線量を確認する臨床試験として開始し、9月末までに9人に実施。従来に比べ痛みや組織の線維化などの副作用が少なく安全性が確認されたとして、引き続き経過観察と有効性を確認する臨床試験として実施していく。

 今井科長は「今のところ対象は限られてはいるが、今後安全性と有効性をさらに実証していきたい」と話している。

 早期乳がん乳房温存手術の術中照射は、イタリアを中心に千例以上実施されている。手術室や移動型の放射線照射装置など、ハード面の整備により、実施できるようになった。

(2008年10月19日 中日新聞朝刊32面より)
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