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2013.07.12
豊橋技科大准教授が解明 害虫に有毒細菌 天敵よけで共生 駆除、抗がん剤開発期待
豊橋技術科学大(愛知県豊橋市)の中鉢淳准教授(共生生物学)らの研究チームが、農業害虫のミカンキジラミが天敵の寄生虫から身を守るため、毒を作る細菌を体内に取り込んでいることを突き止めた。ミカンキジラミの駆除や新たな抗がん剤開発につながる成果として11日、米科学専門誌「カレント・バイオロジー」電子版に発表した。
生物が天敵から身を守るために細菌を体内に取り込み、共生する例を確認したのは初めて。毒を作る細菌を取り込むと自らも毒で死に至る危険性が高く、こうした生物は存在しないとみられていた。
ミカンキジラミの体内にいる細菌は「プロフテラ」。チームは、この細菌の遺伝情報を解読するなどして強い毒素を持つ化合物を見つけ、ディアフォリンと名付けた。
世界各地から採集した800匹のミカンキジラミを調べた結果、すべての体内細菌にディアフォリンを作る遺伝子があり、ミカンキジラミが生きていく上で不可欠だと分かった。
毒素を体内に入れて生存できる理由はまだ解明できていない。
ディアフォリンは、がん細胞の増殖を防ぐ性質を持っており、新薬への応用が期待される。チームは一般的な害虫駆除への実用化も目指す。中鉢准教授は「害虫と細菌の共生関係を成り立たせる仕組みを解明し、その関係を壊す駆除法を開発していきたい」と話している。
【ミカンキジラミ】 キジラミ科の昆虫。体長約3ミリ。本来の生息地であるアジアの熱帯・亜熱帯地域から近年、中東や南米・北米大陸に分布を広げ、日本では九州への上陸が確認された。針状の口からかんきつ類などの樹液を吸って繁殖し、木を枯死させるカンキツグリーニング病を媒介する。薬剤駆除は難しく、感染すると木は数年以内に枯死するため、世界各地のかんきつ産業が打撃を受けている。
(2013年7月12日 中日新聞夕刊3面より)
生物が天敵から身を守るために細菌を体内に取り込み、共生する例を確認したのは初めて。毒を作る細菌を取り込むと自らも毒で死に至る危険性が高く、こうした生物は存在しないとみられていた。
ミカンキジラミの体内にいる細菌は「プロフテラ」。チームは、この細菌の遺伝情報を解読するなどして強い毒素を持つ化合物を見つけ、ディアフォリンと名付けた。
世界各地から採集した800匹のミカンキジラミを調べた結果、すべての体内細菌にディアフォリンを作る遺伝子があり、ミカンキジラミが生きていく上で不可欠だと分かった。
毒素を体内に入れて生存できる理由はまだ解明できていない。
ディアフォリンは、がん細胞の増殖を防ぐ性質を持っており、新薬への応用が期待される。チームは一般的な害虫駆除への実用化も目指す。中鉢准教授は「害虫と細菌の共生関係を成り立たせる仕組みを解明し、その関係を壊す駆除法を開発していきたい」と話している。
【ミカンキジラミ】 キジラミ科の昆虫。体長約3ミリ。本来の生息地であるアジアの熱帯・亜熱帯地域から近年、中東や南米・北米大陸に分布を広げ、日本では九州への上陸が確認された。針状の口からかんきつ類などの樹液を吸って繁殖し、木を枯死させるカンキツグリーニング病を媒介する。薬剤駆除は難しく、感染すると木は数年以内に枯死するため、世界各地のかんきつ産業が打撃を受けている。
(2013年7月12日 中日新聞夕刊3面より)