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2012.12.03
東海学生駅伝 中京大A 雪辱/東海学生女子駅伝 名城大A 貫禄
2日に知多半島であった第74回東海学生駅伝対校選手権大会(東海学生陸上競技連盟、中日新聞社主催)は2年ぶりに中京大Aが優勝した。名古屋大Aは2位に入り、昨年優勝の愛工大Aは4位に終わった。同時開催の第6回東海学生女子駅伝対校選手権大会(同)は名城大Aが6年連続で頂点に立った。2位中京大、3位愛知教育大Aと4年連続で同じ顔ぶれとなった。 (福本雅則、山野舞子)
■後輩に最高の贈り物
1年前に流した悔し涙がこの日、後輩への「最高の贈り物」に変わった。
優勝した中京大Aの橋本一樹主将(4年)は、昨年の大会で無念のチーム3位。自身はこのレースで引退だが、優勝すれば後輩が来秋の出雲全日本大学選抜駅伝に出場できる。「今年こそは優勝して必ず出雲駅伝をプレゼントしたい」。強い思いを胸に1年間練習に励んできた。レースは4区を担当。トップでたすきを受け取ったが、中盤で名大Aに追いつかれ、横並びに。揺さぶっても食らい付いてくる相手に焦りながら、ラストの1キロ。沿道で応援する両親から「これで最後だぞ」の声が聞こえた。スパートをかけ、意地の走りで後続を9秒差まで引き離し、5区の田中陽介選手(3年)にたすきを託した。
たすきと一緒に先輩の執念を継いだ田中選手は区間賞の快走。後続との差を一気に1分35秒まで広げ「自分らしい走りができた」と笑顔を見せた。
その後輩は、先輩からもう1つ、大事なものを引き継いだ。新チームの主将だ。レース後、固く握手する2人。橋本主将が「頼んだぞ」と声を掛けると、田中選手は「全国で10位台前半に食い込めるチームにしたい」と頼もしく誓った。
■名大A無念の2位
優勝が有力視された男子の名大Aは無念の2位に終わった。4区までは前を走る中京大Aと数秒差の接戦。だが5区で大きく引き離されると、終盤の巻き返しもならなかった。
11月の全日本大学駅伝では、中京大の19位を上回る17位を記録。「ここ数年では1番強いチーム。力は五分五分だっただけに残念」と金尾洋治コーチ(55)は肩を落とす。
2区の矢野祥一主将(3年)は「序盤もう少し前に出られていれば、後が走りやすかったはず」と反省し「駅伝に特化した練習を増やし、来年こそは頂点をつかみたい」と早くも目標を定めた。
■チーム不調 笑顔なし
後続に3分以上の差をつけてのゴールにも、名城大Aのアンカー小田切亜希主将(4年)に笑顔はなかった。10月の全日本大学女子駅伝で、まさかの7位に終わった悔しさをまだ拭い切れない。不完全燃焼に終わったチームを象徴する表情だった。
東海地方で圧倒的な力を誇り、全国でも優勝争いを期待されるチームだが、主力のけがと不調が尾を引いた。この日もベストメンバーを組めなかったが、小田切主将には学生生活最後の駅伝。「監督や仲間に感謝の思いを込めて走ろう」と、4人の後輩がつないだたすきを受け取り、区間1位の記録でテープを切った。卒業後は、実業団の天満屋に進む。駅伝だけでなく、マラソンにも挑むつもりだ。
後輩たちは、全国の舞台に向けて再出発を切る。「1人1人が持ち味を出し、名城らしい走りをしてほしい」。一緒には走れなくても、励みになる姿を見せようと心に誓っている。
そんな思いを受けて米田勝朗監督(44)は来季を見据える。「練習メニューと体のケアをどこまでしっかりできるか。今年の教訓を生かして、もう1度、全日本の優勝を目指したい」。試練の1年は、きっと復活の良薬となるはずだ。
■沿道から熱い声援
厳しい冷え込みの中、中継点には多くの地元住民や駅伝ファンが集まり、力走する選手たちに熱い声援を送った。
男子2区、女子3区への中継点となった美浜町布土の駐車場前では、選手たちが相次いで姿を見せると、小旗やのぼり旗を持った人たちが「頑張って」と声を掛け、たすきがつながると拍手も起こった。
毎年応援している近くの主婦加藤みさをさん(73)は「選手の懸命な姿に元気をもらえる。最後まで全力を出し切ってほしい」と笑顔で話していた。
■全日本区間賞の足
10月に仙台市であった全日本大学女子駅伝で、1区の区間賞に輝いた中京大の荘司(しょうじ)麻衣選手(1年)が、地元愛知の大会でも快足ぶりを見せつけた。この日は3区に登場。区間記録と19秒差に迫る好タイムで強風の海沿いを駆け抜けた。人間環境大岡崎学園高出身で、中京大入学後に急成長。「区間賞は取るつもりだった。個人ではインカレ優勝が目標」。大物感あふれるスーパー1年生の成長を周囲も楽しみにしている。
(2012年12月3日 中日新聞朝刊20面より)
■後輩に最高の贈り物
1年前に流した悔し涙がこの日、後輩への「最高の贈り物」に変わった。
優勝した中京大Aの橋本一樹主将(4年)は、昨年の大会で無念のチーム3位。自身はこのレースで引退だが、優勝すれば後輩が来秋の出雲全日本大学選抜駅伝に出場できる。「今年こそは優勝して必ず出雲駅伝をプレゼントしたい」。強い思いを胸に1年間練習に励んできた。レースは4区を担当。トップでたすきを受け取ったが、中盤で名大Aに追いつかれ、横並びに。揺さぶっても食らい付いてくる相手に焦りながら、ラストの1キロ。沿道で応援する両親から「これで最後だぞ」の声が聞こえた。スパートをかけ、意地の走りで後続を9秒差まで引き離し、5区の田中陽介選手(3年)にたすきを託した。
たすきと一緒に先輩の執念を継いだ田中選手は区間賞の快走。後続との差を一気に1分35秒まで広げ「自分らしい走りができた」と笑顔を見せた。
その後輩は、先輩からもう1つ、大事なものを引き継いだ。新チームの主将だ。レース後、固く握手する2人。橋本主将が「頼んだぞ」と声を掛けると、田中選手は「全国で10位台前半に食い込めるチームにしたい」と頼もしく誓った。
■名大A無念の2位
優勝が有力視された男子の名大Aは無念の2位に終わった。4区までは前を走る中京大Aと数秒差の接戦。だが5区で大きく引き離されると、終盤の巻き返しもならなかった。
11月の全日本大学駅伝では、中京大の19位を上回る17位を記録。「ここ数年では1番強いチーム。力は五分五分だっただけに残念」と金尾洋治コーチ(55)は肩を落とす。
2区の矢野祥一主将(3年)は「序盤もう少し前に出られていれば、後が走りやすかったはず」と反省し「駅伝に特化した練習を増やし、来年こそは頂点をつかみたい」と早くも目標を定めた。
■チーム不調 笑顔なし
後続に3分以上の差をつけてのゴールにも、名城大Aのアンカー小田切亜希主将(4年)に笑顔はなかった。10月の全日本大学女子駅伝で、まさかの7位に終わった悔しさをまだ拭い切れない。不完全燃焼に終わったチームを象徴する表情だった。
東海地方で圧倒的な力を誇り、全国でも優勝争いを期待されるチームだが、主力のけがと不調が尾を引いた。この日もベストメンバーを組めなかったが、小田切主将には学生生活最後の駅伝。「監督や仲間に感謝の思いを込めて走ろう」と、4人の後輩がつないだたすきを受け取り、区間1位の記録でテープを切った。卒業後は、実業団の天満屋に進む。駅伝だけでなく、マラソンにも挑むつもりだ。
後輩たちは、全国の舞台に向けて再出発を切る。「1人1人が持ち味を出し、名城らしい走りをしてほしい」。一緒には走れなくても、励みになる姿を見せようと心に誓っている。
そんな思いを受けて米田勝朗監督(44)は来季を見据える。「練習メニューと体のケアをどこまでしっかりできるか。今年の教訓を生かして、もう1度、全日本の優勝を目指したい」。試練の1年は、きっと復活の良薬となるはずだ。
■沿道から熱い声援
厳しい冷え込みの中、中継点には多くの地元住民や駅伝ファンが集まり、力走する選手たちに熱い声援を送った。
男子2区、女子3区への中継点となった美浜町布土の駐車場前では、選手たちが相次いで姿を見せると、小旗やのぼり旗を持った人たちが「頑張って」と声を掛け、たすきがつながると拍手も起こった。
毎年応援している近くの主婦加藤みさをさん(73)は「選手の懸命な姿に元気をもらえる。最後まで全力を出し切ってほしい」と笑顔で話していた。
■全日本区間賞の足
10月に仙台市であった全日本大学女子駅伝で、1区の区間賞に輝いた中京大の荘司(しょうじ)麻衣選手(1年)が、地元愛知の大会でも快足ぶりを見せつけた。この日は3区に登場。区間記録と19秒差に迫る好タイムで強風の海沿いを駆け抜けた。人間環境大岡崎学園高出身で、中京大入学後に急成長。「区間賞は取るつもりだった。個人ではインカレ優勝が目標」。大物感あふれるスーパー1年生の成長を周囲も楽しみにしている。
(2012年12月3日 中日新聞朝刊20面より)