進学ナビ

HOME > 中日新聞掲載の大学記事 > 全て

中日新聞掲載の大学記事

2012.06.04

奈良期 太陽「スーパーフレア」か 地球へ飛来の宇宙線激増

■名大グループ 屋久杉で測定

 奈良時代後期の775年に地球へ飛来した宇宙線が急激に増加しており、宇宙空間に大変動があったことを、名古屋大年代測定総合研究センターの中村俊夫教授や太陽地球環境研究所の増田公明准教授らのグループが鹿児島県・屋久杉の年輪測定で突き止めた。太陽の表面で超巨大な爆発現象「スーパーフレア」が発生した可能性があるという。英科学誌「ネイチャー」電子版に3日、発表した。

 星が寿命を終える前に起きる「超新星爆発」や、スーパーフレアが宇宙で発生すると、地球に降り注ぐ放射線(宇宙線)が激増。この宇宙線が大気中の窒素などと反応し、放射性炭素が生み出される。

 グループは、樹齢1900年の屋久杉の年輪に含まれる放射性炭素を測定。その結果、774年から1年間の増量がほかの年の増減変化量の20倍に達していた。

 太陽の表面では黒点付近を中心に「太陽フレア」という爆発が繰り返される。太陽フレアは地球に磁気嵐をもたらし、精密機器に影響を与えることでも知られる。スーパーフレアは規模が太陽フレアの100〜1000倍に達する。

 今回分かった宇宙の大変動がスーパーフレアだとすると、測定された放射性炭素の量から計算して通常の太陽フレアの1000倍の規模だった可能性がある。山形大理学部の桜井敬久教授は「超新星爆発が原因なら、放射性炭素の増加時期は1年間よりももっと長いはず。そう考えれば、スーパーフレアの可能性が高い」と指摘する。

 スーパーフレアは太陽では起きないと従来いわれていたが、京都大付属天文台のグループが、太陽の表面で起こるかもしれないとの解析結果を5月16日付のネイチャーに発表している。

 太陽の活動は現在、活発でない時期に入っている。大気中の放射性炭素は太陽の爆発で増えるが、太陽活動の低下でも増加する。

 増田准教授は「年ごとの過去の放射性炭素の変化と地球環境の変化を詳しく調べて併せ考えることで、将来の地球環境を予測できる」と話している。

(2012年6月4日 中日新聞朝刊3面より)

戻る < 一覧に戻る > 次へ