HOME > 中日新聞掲載の大学記事 > 全て
2012.04.10
「脳が排卵促進」解明 名大グループ発表
■不妊治療に応用期待
女性ホルモンの一種エストロゲンが、脳に働き掛け排卵を引き起こす仕組みを、名古屋大大学院生命農学研究科の束村博子准教授らのグループがマウスを使った実験で明らかにした。米科学アカデミー紀要(電子版)に9日、発表した。正常な排卵を起こすことによって有効な不妊治療につながるという。
卵巣内で、排卵間近に成長した卵胞は、大量のエストロゲンを放出。脳前方で生殖活動に関わる神経細胞「キスペプチンニューロン」を活性化させることは分かっていたが、その仕組みは解明されていなかった。
束村准教授らは、卵巣を摘出したマウス40匹を2つのグループに分け、一方だけにエストロゲンを大量に投与した。するとエストロゲンが、神経細胞内でヒストンというタンパク質に巻き付く遺伝子を緩ませ、排卵を促すキスペプチン遺伝子を発現させていることが分かった。投与しなかったマウスでは緩んでいなかった。
排卵が正常にみられない不妊症の治療法では、生殖器に直接働き掛けるホルモン療法が主流だが、排卵誘発剤により未熟な卵胞が排卵される問題も指摘されている。
束村准教授によると、人間も動物も基本的に生殖機能のメカニズムは同じ。脳が排卵に働き掛ける仕組みが解明されたことに、束村准教授は「卵巣への直接的な治療ではなく、脳中枢へ働き掛ける治療に有効な発見となった」と話す。不妊治療だけでなく乳牛など家畜の繁殖率向上にもつながる成果だという。
(2012年4月10日 中日新聞朝刊3面より)
女性ホルモンの一種エストロゲンが、脳に働き掛け排卵を引き起こす仕組みを、名古屋大大学院生命農学研究科の束村博子准教授らのグループがマウスを使った実験で明らかにした。米科学アカデミー紀要(電子版)に9日、発表した。正常な排卵を起こすことによって有効な不妊治療につながるという。
卵巣内で、排卵間近に成長した卵胞は、大量のエストロゲンを放出。脳前方で生殖活動に関わる神経細胞「キスペプチンニューロン」を活性化させることは分かっていたが、その仕組みは解明されていなかった。
束村准教授らは、卵巣を摘出したマウス40匹を2つのグループに分け、一方だけにエストロゲンを大量に投与した。するとエストロゲンが、神経細胞内でヒストンというタンパク質に巻き付く遺伝子を緩ませ、排卵を促すキスペプチン遺伝子を発現させていることが分かった。投与しなかったマウスでは緩んでいなかった。
排卵が正常にみられない不妊症の治療法では、生殖器に直接働き掛けるホルモン療法が主流だが、排卵誘発剤により未熟な卵胞が排卵される問題も指摘されている。
束村准教授によると、人間も動物も基本的に生殖機能のメカニズムは同じ。脳が排卵に働き掛ける仕組みが解明されたことに、束村准教授は「卵巣への直接的な治療ではなく、脳中枢へ働き掛ける治療に有効な発見となった」と話す。不妊治療だけでなく乳牛など家畜の繁殖率向上にもつながる成果だという。
(2012年4月10日 中日新聞朝刊3面より)