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中日新聞掲載の大学記事

2008.07.07

看護師は足りず 増える看護大

『就職に直結』と人気 入学定員、20年前の20倍
専門学校から短大、大学へ背景に高学歴志向

 看護系の大学や学科を新設する動きが止まらない。看護を学べる大学は、1989年の11大学から2007年は157大学に増加した。2009年4月には、豊橋創造大(愛知県豊橋市)が看護学科を設置し、平成医療専門学院(岐阜市)は大学への移行を念頭に短大を新設する。就職に直結する看護師の衰えない人気を、社会の高学歴志向が加速させている。 (社会部・藤野治英)

 1993年に入学定員40人の専門学校として看護学科を設けた平成医療専門学院は、8月に隣接地で短大(定員80人)の新校舎建設に着工する。豊橋創造大も「東三河で初」を売りに定員80人の看護学科の新設準備を進めている。来春開学を目指し文部科学省に申請している大学のうち8大学が看護学科を設ける。

 全国の看護系大学の入学定員は、89年の計558人が07年に1万2000人を超え、20倍以上となった。志願者も増加傾向を見せ、07年の倍率は5・3倍と高い水準を維持している。

 就職に直結していることが看護系学校の人気の一因だ。「昨年度は専門学校の生徒40人に対し延べ1万8000人の求人があった」(平成医療専門学院の短大開設準備室)という。専門学校を含め看護系の入学定員は約1万9000人。厚生労働省によると、看護師は06年で4万2000人足りず、休職や離職もあって人手不足が解消する見通しは立っていない。今年3月現在の有効求人倍率は2・30倍(保健師と助産師を含む)で、希望さえすれば就職できる。

 かつて看護師になるには、専門学校や短大に入学するのが主流だったが、社会の高学歴志向とともに大学への志願者が増加。現在でも、愛知県立看護大には「定員を増やして」という要望が県内の高校からいくつも届いている。文科省医学教育課は「高学歴志向を背景に、看護系の学校の専門学校から短大、4大へのランクアップはしばらく続くのでは」とみる。

 愛知県立看護大は来春、大学の統合で県立大看護学部になるのを機に、入学定員を10人増の90人にする。学部長に就任予定の鎌倉やよい大学院看護学研究科長は「医療が高度化して、看護師にも豊富な知識と技量が必要な時代になった」と大学の役割を強調。新たに博士課程を設置し、看護学の研究者や教育者の養成に本腰を入れる。修士課程の充実も図り、県立大ブランドを確立してレベルの高い志願者を集める考えだ。

 中部地方では、これまで06年に中部大が6つ目の学部として生命健康科学部を設け、短大を前身に岐阜医療科学大が誕生。07年には四日市看護医療大が三重県四日市市の補助を受けて開校した。

 ただ、大手予備校の河合塾(名古屋市)は「選択肢が広がり、全国的には志願者が集まらない大学も出てきた」とみる。今後、特色ある学校づくりが求められている。

(2008年7月7日 中日新聞朝刊9面より)
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