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お知らせ  2024.07.12

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教材衛星 宇宙に挑む 福井大・名城大など共同開発

今秋に国際宇宙ステーションから放出される「DENDEN-01」。写真は展開式太陽電池パドルを広げたイメージ図=いずれも関西大提供

今秋に国際宇宙ステーションから放出される「DENDEN-01」。写真は展開式太陽電池パドルを広げたイメージ図=いずれも関西大提供

 福井大と名城大、関西大などの研究グループが9月、人工衛星を模した教材を基にした超小型衛星を打ち上げる。教材に最小限の変更を加えることで、2年での開発に成功した。次世代の太陽電池などを搭載し、宇宙空間で性能を維持する実証を行う。グループは「さらに教材を充実させ、地方の企業などが宇宙産業に参入するハードルを下げたい」としている。

 衛星は3大学と民間企業が共同開発した「DENDEN-01(デンデン・ゼロワン)」。1辺10センチほどの立方体型で、重さは1・32キロ。太陽電池やアンテナ、カメラなどを搭載する。

 ベースになった教材は、福井大と繊維メーカー「セーレン」(福井市)が開発した教材キット「EDIT」。実際に宇宙での性能が確認された衛星の部品が使われ、国際宇宙ステーション(ISS)から放出するために必要な規格に適合している。宇宙産業への参入を目指す企業や学生が衛星の構造などを実践的に学ぶことができる。

■今秋 超小型で次世代電池検証

 グループは2022年2月、宇宙航空研究開発機構(JAXA)のプログラムに採択されたのを機に、24年の完成を目標に衛星開発を本格的に始めた。EDITを活用することで、設計変更は太陽電池のパネルを付けるなどの最小限にとどめ、24年5月に完成。審査などを経て、6月4日にJAXAに引き渡した。

 衛星は米国からロケットで打ち上げ、10月にISSから放出する計画。その後は安定して性能を維持する方法を探るため、太陽電池などのエネルギー技術の実証実験で、発電量や耐久性などを確かめる。

 従来の衛星用の太陽電池は重く、打ち上げにコストがかかるなどの課題があった。DENDEN-01に搭載した「ペロブスカイト太陽電池」は軽くて折り曲げることができ、少ない光でも発電可能なため、次世代衛星の電力源として期待されている。

 福井大産学官連携本部の青柳賢英特命准教授は「教材を活用することでスピーディーな衛星開発が可能になった」と強調し、今後の衛星運用や新たな教材開発に意欲を見せた。

(2024年7月12日 中日新聞朝刊26面より)

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