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お知らせ 2024.05.23
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映像見ながら 動いて覚えて 運転寿命 延ばそう
■鈴鹿医療科学大など 自動車学校と実証実験
実車を使わず、映像を見てからだを動かしながら気軽に運転寿命と健康寿命を延ばしてもらおうと、中勢自動車学校(三重県鈴鹿市)と鈴鹿医療科学大(同)などが、専用プログラムの開発を進めている。公共交通網が脆弱(ぜいじゃく)な地域では、運転免許の返納に悩む高齢者は少なくない。プロジェクト関係者は「運転を続けるか迷っている人たちの一助になれば」と期待を込める。(沢井秀之、写真も)
プログラムは1時間で、昨年11月に鈴鹿市内で実証実験が始まった。対象は自動車学校の高齢者講習の受講者。映像を見ながら信号の色の変化に合わせて手足を動かしたり、登場する動物の数を数えて記憶したりする。身体機能と、注意力や判断力の向上が狙いだ。
今年3月まで月1回続けた実証実験には66~88歳の約40人が参加した。結果は良好で、指定速度での走行や一時停止、右左折などの状況判断が求められる運転技能検査では、減点法による採点結果が平均マイナス19.9からプラス6.8点まで向上した。ふらつきが減り、周囲の安全確認ができるようになるなどの効果が確認できた。
実証実験の一環でプログラムの体験会に参加した男性(82)=同市南若松町=は安全運転を心がけているが不安も感じているという。「ゲーム感覚だけど集中できる。参加できてよかった」と話した。中勢自動車学校では6月から、高齢者講習の受講者を対象に有料でプログラムを提供する。
警察庁の運転免許統計によると、2022年末時点の運転免許保有者数は8184万549人で、13年末から微減した。一方、65歳以上は1946万2156人で26.9%増えており、高齢の運転者対策が重要性を増している。
現在、運転免許がある75歳以上の高齢者向けには、認知機能検査と同乗教習が3年に1度、法定講習としてある。ただ、中勢自動車学校の櫛田拓真社長は「運転者の技能が一定の水準に届いているかを確認する内容。技能を伸ばす形にはなっていない」と指摘する。「運動能力と認知機能を上げる取り組みはまだ全国的にも少なく、どうすれば解決できるかは自動車学校共通の悩みだ」と語った。
開発に携わる鈴鹿医療科学大の野口佑太助教(作業療法学)によると、運転を継続した人は認知症になるリスクが約4割減少し、運転をやめた人は要介護リスクが約8倍に上昇したとの研究結果があるという。
今回のプログラムでは、実車を使わない。個別指導の必要がないため効率的にでき、集まって楽しみながらできるため参加のハードルが低いなど、メリットがあるという。野口助教は「運転に必要な身体、認知機能の状態は人それぞれ。長く安全に運転してもらうため、運転が続けられる選択肢を広げるきっかけにしたい」と話した。
実証実験は、スポーツ庁の補助金採択事業。プログラムには、通信カラオケ機器大手の第一興商(東京都)が協力している。
(2024年5月23日 中日新聞夕刊1面より)
実車を使わず、映像を見てからだを動かしながら気軽に運転寿命と健康寿命を延ばしてもらおうと、中勢自動車学校(三重県鈴鹿市)と鈴鹿医療科学大(同)などが、専用プログラムの開発を進めている。公共交通網が脆弱(ぜいじゃく)な地域では、運転免許の返納に悩む高齢者は少なくない。プロジェクト関係者は「運転を続けるか迷っている人たちの一助になれば」と期待を込める。(沢井秀之、写真も)
プログラムは1時間で、昨年11月に鈴鹿市内で実証実験が始まった。対象は自動車学校の高齢者講習の受講者。映像を見ながら信号の色の変化に合わせて手足を動かしたり、登場する動物の数を数えて記憶したりする。身体機能と、注意力や判断力の向上が狙いだ。
今年3月まで月1回続けた実証実験には66~88歳の約40人が参加した。結果は良好で、指定速度での走行や一時停止、右左折などの状況判断が求められる運転技能検査では、減点法による採点結果が平均マイナス19.9からプラス6.8点まで向上した。ふらつきが減り、周囲の安全確認ができるようになるなどの効果が確認できた。
実証実験の一環でプログラムの体験会に参加した男性(82)=同市南若松町=は安全運転を心がけているが不安も感じているという。「ゲーム感覚だけど集中できる。参加できてよかった」と話した。中勢自動車学校では6月から、高齢者講習の受講者を対象に有料でプログラムを提供する。
警察庁の運転免許統計によると、2022年末時点の運転免許保有者数は8184万549人で、13年末から微減した。一方、65歳以上は1946万2156人で26.9%増えており、高齢の運転者対策が重要性を増している。
現在、運転免許がある75歳以上の高齢者向けには、認知機能検査と同乗教習が3年に1度、法定講習としてある。ただ、中勢自動車学校の櫛田拓真社長は「運転者の技能が一定の水準に届いているかを確認する内容。技能を伸ばす形にはなっていない」と指摘する。「運動能力と認知機能を上げる取り組みはまだ全国的にも少なく、どうすれば解決できるかは自動車学校共通の悩みだ」と語った。
開発に携わる鈴鹿医療科学大の野口佑太助教(作業療法学)によると、運転を継続した人は認知症になるリスクが約4割減少し、運転をやめた人は要介護リスクが約8倍に上昇したとの研究結果があるという。
今回のプログラムでは、実車を使わない。個別指導の必要がないため効率的にでき、集まって楽しみながらできるため参加のハードルが低いなど、メリットがあるという。野口助教は「運転に必要な身体、認知機能の状態は人それぞれ。長く安全に運転してもらうため、運転が続けられる選択肢を広げるきっかけにしたい」と話した。
実証実験は、スポーツ庁の補助金採択事業。プログラムには、通信カラオケ機器大手の第一興商(東京都)が協力している。
(2024年5月23日 中日新聞夕刊1面より)