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お知らせ 2023.04.07
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愛知県立芸術大 「原爆の図」修復 「本紙貼り込み」 作業大詰め
被爆直後の広島や長崎の惨状を題材に描かれた連作絵画「原爆の図」(丸木位里、俊夫妻の合作)。その第1部「幽霊」の修復を担っている愛知県立芸術大(同県長久手市)で、作業が大詰めを迎えている。3月末には、修復の済んだ絵を屛風(びょうぶ)に貼りつける「本紙貼り込み」と呼ばれる作業があり、職員らが裏側にのりを塗り、立てられた屛風に一面ずつ貼り合わせた。
「幽霊」は1950年に丸木夫妻が発表した四曲一双の屛風。夫妻が開設した「原爆の図 丸木美術館」(埼玉県東松山市)が所蔵している。美術館によると、修復前は経年劣化で屛風の枠がゆがみ、画面の一部が浮いた状態だった。絵の表面も、汚れが目立っていた。
修復作業は美術館の依頼で、2022年1月から学内の文化財保存修復研究所で実施している。職員らが屛風を新たに仕立て替え、以前より白みのある裏打ち紙に張り替えた。研究所によると、当初心配されていた虫食いの被害はほとんどなかったという。
今後、細かな部分の補彩などを経て、夏ごろに美術館に引き渡される予定。修復を担当した研究所の磯谷明子さんは「作品をこの先何十年、何百年と引き継いでいく歴史の一部を担うことができたのは光栄」。美術館の後藤秀聖学芸員は「黒の発色がはっきり見えるなど、違いが視覚的にもよく分かる。今回の記録は、いずれ取り組むであろう他の『原爆の図』作品の修復にもきっと役立てられるはず」と話す。館は、所蔵する第2部「火」以降の作品も修復を検討している。(宮崎正嗣)
(2023年4月7日 中日新聞朝刊13面より)
「幽霊」は1950年に丸木夫妻が発表した四曲一双の屛風。夫妻が開設した「原爆の図 丸木美術館」(埼玉県東松山市)が所蔵している。美術館によると、修復前は経年劣化で屛風の枠がゆがみ、画面の一部が浮いた状態だった。絵の表面も、汚れが目立っていた。
修復作業は美術館の依頼で、2022年1月から学内の文化財保存修復研究所で実施している。職員らが屛風を新たに仕立て替え、以前より白みのある裏打ち紙に張り替えた。研究所によると、当初心配されていた虫食いの被害はほとんどなかったという。
今後、細かな部分の補彩などを経て、夏ごろに美術館に引き渡される予定。修復を担当した研究所の磯谷明子さんは「作品をこの先何十年、何百年と引き継いでいく歴史の一部を担うことができたのは光栄」。美術館の後藤秀聖学芸員は「黒の発色がはっきり見えるなど、違いが視覚的にもよく分かる。今回の記録は、いずれ取り組むであろう他の『原爆の図』作品の修復にもきっと役立てられるはず」と話す。館は、所蔵する第2部「火」以降の作品も修復を検討している。(宮崎正嗣)
(2023年4月7日 中日新聞朝刊13面より)