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お知らせ  2020.02.06

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先端技術で上質イチゴ AI データ蓄積 5Gで授粉解析

イチゴの摘果作業を行う金沢工業大の職員ら。右側の黒い球体が360度撮影できるカメラ=石川県白山市の金沢工業大白山麓キャンパスで

イチゴの摘果作業を行う金沢工業大の職員ら。右側の黒い球体が360度撮影できるカメラ=石川県白山市の金沢工業大白山麓キャンパスで

■白山麓で産学研究 担い手不足解消

 石川県白山市の金沢工業大・白山麓キャンパスで、次世代通信規格(5G)やAI(人工知能)など先端技術を活用したイチゴ栽培の産学連携プロジェクトが進んでいる。遠隔地から熟練生産者の指示を受けたり、ハチの授粉率を高めたりと、初心者でも高品質のイチゴを作れるシステムを構築するのが狙い。6年目を迎え、担当者は「まだ5合目」と話すが、農業の担い手不足解消と山間地域の活性化というゴールに向けて歩みを続けている。(蓮野亜耶、写真も)

 真っ赤に色付いた実が並び、甘い香りが漂う-。白山麓キャンパスのハウス内では、食べ頃を迎えたイチゴの摘果が進む。生育状況はカメラで常時撮影し、近隣のハウスでイチゴを育てて16年になるベテランから逐一、指示を受けながら大学職員が栽培してきた。

 プロジェクトの主体は発電システム製造の北菱電興(金沢市)と金沢工業大(同県野々市市)、農事組合法人「んなーがら上野営農組合」(白山市)。2015年に実証研究をスタートさせ、今後、ベテラン生産者のノウハウをデータとして蓄積し、AIに学習させる計画もある。

 昨年10月から新たに挑戦しているのは5Gを活用したハチの動きの解析だ。北菱電興新規事業企画室の酒元一幸室長(47)は「甘くて形のいいイチゴを育てるには、ハチの授粉をいかに促すかがカギを握る」と力を込める。

 NTTドコモ北陸支社(金沢市)の協力を得て、360度撮影できる高解像度カメラでハウス内を飛び回るハチの動きを撮影。高速・大容量・低遅延が特徴の5Gにより、リアルタイムで高精細な映像を解析している。

 将来は専用のゴーグルを装着し、遠隔地からハウス内の温度や湿度を調節できるソフトを開発する考えだ。酒元室長は「完成すれば、ハウスに出向かなくてもハチが活動しやすい環境を整えられる」と作業の効率化に期待を寄せる。

 環境配慮型の農業も目標に掲げる。ハウス栽培では光合成を促進するため二酸化炭素(CO2)を中に送り込むことが必要で、化石燃料を燃焼させるのが課題だった。そこで大気中のCO2を濃縮生成する装置を導入し、電気は大学近くの森林から出た間伐材を使ったバイオマス発電で賄う予定をしている。

 プロジェクトを一般に広く知ってもらおうと、18年に開設したイチゴ摘み取り体験施設「いちごファームHakusan」(白山市)には県内外から半年で5000人余りが見学に訪れ、関心を集めた。酒元室長は「私たちが目指す未来の農業にはいろんな可能性がある。地方創生にも寄与できる研究にしていきたい」と意気込んでいる。

(2020年2月6日 北陸中日新聞朝刊1面より)

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