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お知らせ 2018.10.23
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「安全な病院」に太鼓判 藤田医大 質向上へ厳しい審査合格
■国際的認証JCI取得広がる
国際的な医療機能評価機構「JCI」(本部・米シカゴ)の認証を取得する取り組みが、国内の病院で広がっている。日本国内にも病院を評価する仕組みがあるが、JCIが世界で最も厳しい審査と言われ、安全な医療を患者に提供できているか、医療の質の向上に努めているかどうか、1000を超える項目について専門家が現場でチェックする。認証を受けた中部地方の病院の取り組みを追った。
(小中寿美、安田功)
入院患者がベッドから起きて立とうとすると、近くの看護師が両手で支えた。患者の手首にはオレンジ色のリストバンド。普段は歩行に問題がなくても、術後はふらつき転倒することもある。1人1人のリスクを評価し、印を着けることで注意を払いやすくなった。
8月に認証を取得した藤田医科大病院(愛知県豊明市、10日に藤田保健衛生大から改名)が「転倒・転落のリスク低減」のために始めた一例。ここ2年間、こうした工夫や改善を積み重ねてきた。「患者本位の医療がもともとの理念。実現できているかをJCIの指標で確認したかった」と湯沢由紀夫院長(62)は話す。
病院の種類でプログラムが異なり、大学病院の審査項目は1270に上る。教育や研究を担うため一般病院よりも70項目ほど多いのが特徴だ。
審査は、医師や経営の専門家ら5人が5日間かけて行った。設備や患者向けの表示、医療機器などを細かく調べるほか、採用まもないスタッフや患者にも聞き取りをして、工夫や改善が現場に浸透しているか確かめる。同病院はほとんどの項目で基準を満たし合格。国内の大学病院では3例目の取得となった。
「非常に厳しい道のりだったが、取り組む中で安全性を高められたと思う」と湯沢院長。各項目の基準をどう満たすかは病院の実情に合わせて考えねばならない。項目の分野ごとに16のチームを作って具体策を練り、現場に取り入れた。
例えば手術では、診療科ごとにバラバラだった手術部位の印を「◎」に統一。薬品の入った容器を洗う際に飛沫(ひまつ)が目に入る事態に備え、院内各所に目の洗浄器を取り付けた。薬品の冷蔵庫は温度が自動で管理されているが、表示が正しいとは限らない。冷蔵庫内にも温度計を取り付け、職員がチェックすることにした。
特に大変だったのは現場への周知。国内最多の病床数を誇る同病院は、職員に学生、飲食店などの業者を含めると4000人の関係者がいる。マニュアルを配り、勉強会も開いて徹底した。「そこまでやる必要があるのか」と異論も出たが、湯沢院長らが「日本一質の高い病院を目指そう」と呼び掛け続けた。
認証は3年ごとの更新。改善を続けることが重視され、審査はさらに厳しくなる。聖隷浜松病院(浜松市中区)は6年前に中部地方で初めて認証を取得し、2度の更新審査を経験した。「2度目は特に大変だった。あら探しをしようという審査員の意図を感じた」と取り組みを指揮した山本貴道副院長(57)は振り返る。
審査初日に「申し送りが文書化されていない」と指摘された。プログラムも3年ごとに改定されており、新たに追加された項目だった。申し送りを記録できるように対策を取り、滑り込みで基準を満たした。
「3度目の方がスムーズだった。取り組みが文化として根付いてきたと思う」と山本副院長。設備の改善などでコストもかかるが、認証を更新したい考えだ。認証の取得は患者の病院選びにも役立つはずだが「6年たってもほとんど知られていない。どう知らせていくかも課題」と話している。
【JCI】米国の医療機関を対象とした第3者評価機関(1951年設立)の国際部門として94年に設立された非営利組織。米国の外科医が自身の治療を第3者に評価してもらいたいと考えたことが発端とされる。米国では9割を超える病院が認証を取得。中国や韓国、タイ、インドなどアジアでも多くの病院が取得する。日本国内は26施設が取得し、中部地方ではほかに相沢病院(長野県松本市)が5年前、名古屋第二赤10字病院(名古屋市昭和区)が今年3月に取得している。
(2018年10月22日 中日新聞朝刊23版より)
国際的な医療機能評価機構「JCI」(本部・米シカゴ)の認証を取得する取り組みが、国内の病院で広がっている。日本国内にも病院を評価する仕組みがあるが、JCIが世界で最も厳しい審査と言われ、安全な医療を患者に提供できているか、医療の質の向上に努めているかどうか、1000を超える項目について専門家が現場でチェックする。認証を受けた中部地方の病院の取り組みを追った。
(小中寿美、安田功)
入院患者がベッドから起きて立とうとすると、近くの看護師が両手で支えた。患者の手首にはオレンジ色のリストバンド。普段は歩行に問題がなくても、術後はふらつき転倒することもある。1人1人のリスクを評価し、印を着けることで注意を払いやすくなった。
8月に認証を取得した藤田医科大病院(愛知県豊明市、10日に藤田保健衛生大から改名)が「転倒・転落のリスク低減」のために始めた一例。ここ2年間、こうした工夫や改善を積み重ねてきた。「患者本位の医療がもともとの理念。実現できているかをJCIの指標で確認したかった」と湯沢由紀夫院長(62)は話す。
病院の種類でプログラムが異なり、大学病院の審査項目は1270に上る。教育や研究を担うため一般病院よりも70項目ほど多いのが特徴だ。
審査は、医師や経営の専門家ら5人が5日間かけて行った。設備や患者向けの表示、医療機器などを細かく調べるほか、採用まもないスタッフや患者にも聞き取りをして、工夫や改善が現場に浸透しているか確かめる。同病院はほとんどの項目で基準を満たし合格。国内の大学病院では3例目の取得となった。
「非常に厳しい道のりだったが、取り組む中で安全性を高められたと思う」と湯沢院長。各項目の基準をどう満たすかは病院の実情に合わせて考えねばならない。項目の分野ごとに16のチームを作って具体策を練り、現場に取り入れた。
例えば手術では、診療科ごとにバラバラだった手術部位の印を「◎」に統一。薬品の入った容器を洗う際に飛沫(ひまつ)が目に入る事態に備え、院内各所に目の洗浄器を取り付けた。薬品の冷蔵庫は温度が自動で管理されているが、表示が正しいとは限らない。冷蔵庫内にも温度計を取り付け、職員がチェックすることにした。
特に大変だったのは現場への周知。国内最多の病床数を誇る同病院は、職員に学生、飲食店などの業者を含めると4000人の関係者がいる。マニュアルを配り、勉強会も開いて徹底した。「そこまでやる必要があるのか」と異論も出たが、湯沢院長らが「日本一質の高い病院を目指そう」と呼び掛け続けた。
認証は3年ごとの更新。改善を続けることが重視され、審査はさらに厳しくなる。聖隷浜松病院(浜松市中区)は6年前に中部地方で初めて認証を取得し、2度の更新審査を経験した。「2度目は特に大変だった。あら探しをしようという審査員の意図を感じた」と取り組みを指揮した山本貴道副院長(57)は振り返る。
審査初日に「申し送りが文書化されていない」と指摘された。プログラムも3年ごとに改定されており、新たに追加された項目だった。申し送りを記録できるように対策を取り、滑り込みで基準を満たした。
「3度目の方がスムーズだった。取り組みが文化として根付いてきたと思う」と山本副院長。設備の改善などでコストもかかるが、認証を更新したい考えだ。認証の取得は患者の病院選びにも役立つはずだが「6年たってもほとんど知られていない。どう知らせていくかも課題」と話している。
【JCI】米国の医療機関を対象とした第3者評価機関(1951年設立)の国際部門として94年に設立された非営利組織。米国の外科医が自身の治療を第3者に評価してもらいたいと考えたことが発端とされる。米国では9割を超える病院が認証を取得。中国や韓国、タイ、インドなどアジアでも多くの病院が取得する。日本国内は26施設が取得し、中部地方ではほかに相沢病院(長野県松本市)が5年前、名古屋第二赤10字病院(名古屋市昭和区)が今年3月に取得している。
(2018年10月22日 中日新聞朝刊23版より)