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中日新聞掲載の大学記事

2008.05.15

立体構造を初解明 新薬開発へ鍵のタンパク 名大教授ら、イカ使い成功

 名古屋大大学院理学研究科の神山勉教授、村上緑助教(生物物理学)のグループが、スルメイカの目の刺激伝達にかかわるタンパク質「ロドプシン」の分子の立体構造を世界で初めて解明した。

 ロドプシンは、ヒトで最も種類の多いタンパク質「GPCR」と似た働きをしており、その異常がさまざまな疾患に関係するため、構造解明が医薬品の開発に役立つという。

 ロドプシンは網膜の細胞膜にあり、光の刺激を細胞内に伝えるセンサーの役割をする。ロドプシンに代表されるGPCRは、ヒトでも光を含め外界の情報を細胞内に伝えるセンサーの役割をしている。センサーの異常はアレルギー反応や精神疾患などに大きく関係する。このためGPCRの構造把握が新薬開発の課題だった。

 神山教授らは、スルメイカの目の網膜からロドプシンのみを取り出し、結晶化させる技術を開発。結晶をエックス線で解析した。ロドプシン1分子は358個のアミノ酸がひも状に連なるらせん構造で幅5ナノメートル(1ナノメートルは10億分の一メートル)、高さ10ナノメートル程度。らせんの空間にある水分子を通じ情報を伝達していることが分かった。成果は15日発行の英科学誌「ネイチャー」電子版に発表される。

(2008年5月15日 中日新聞朝刊27面より)

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