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2010.01.09
学生衛星できた 愛知工科大など共同プロジェクト
■今年中にも金星へ
国内20の大学などによる共同プロジェクト、深宇宙探査機「UNITEC−1」の開発で、愛知県蒲郡市の愛知工科大の学生が製作を担当した機体が完成。最終試験を経て、今年中にも日本初の金星探査機「あかつき」に相乗りして、H2Aロケットで打ち上げられる。地元企業のサポートも得て、ものづくりの先端を体験した学生は「自分の手で作ったものが宇宙に行くなんて信じられない気持ち」と打ち上げを心待ちにしている。 (蒲郡通信局・中山聡幸)
UNITEC−1は、一辺35センチの立方体で、「小型副衛星」と呼ばれるタイプの衛星。開発にはNPO法人「大学宇宙工学コンソーシアム」に所属する大学、高専が参加した。国の宇宙機関以外の民間団体が、地球の重力圏外での活動に挑戦するのは、世界で初めてという試みだ。
打ち上げ後、地球から約6300万キロ離れた金星に接近してから、太陽の周りを楕円(だえん)状に周回。慶応大など6つの大学が製作したコンピューターを積み込み、過酷な環境の宇宙空間でどれが最後まで正常に働くか「生き残り競争」をするのが最大のミッション。
愛知工科大では、工学部ロボットシステム工学科の奥山圭一准教授(46)の研究室が参加。「以前から宇宙に興味があり、話を聞いて飛び付いた」という浅倉秀紀さん(22)ら4年生の5人が、実験の舞台となる機体の製作を担当した。
機体には、ロケット打ち上げ時の振動や金星近くでは200度からマイナス270度に激変する温度差に耐える頑丈さと精密さが求められる。作業は昨年4月、北海道大と九州大が担当した熱計算と構造計算の結果を踏まえ、図面を書くところからスタートした。
学生たちにとって、宇宙探査機の製作はもちろん初めての体験。部品の形状に試行錯誤を重ね、別の衛星に使われた太陽光電池を再利用する独自の加工法も編み出した。時間的制約がある中、いざ組み上げるとねじ穴の位置が違って真っ青になったり、搭載部品の仕様が1つ変わっただけで芋づる式に全面的な見直しを迫られたりもしたが「みんなの熱意」(奥山准教授)で切り抜けた。
■蒲郡の企業もサポート
学生らを全面的に支えたのが地元の精密部品加工業・蒲郡製作所。部品の材料となる特殊なジュラルミンなどの製造・加工を請け負った。伊藤智啓社長(49)は「プロとして、学生の引いた図面以上に精密なものを作り、学生の気持ちに応える仕事ができた」と産学連携の成果に胸を張る。
打ち上げは、2010年度内とだけ決まっていて時期は未定。「あきらめなければ何でもできることが分かった」と振り返る学生は、大学に残る1人を除き4月に就職の予定だが、「絶対にこの目で見届けたい」と種子島宇宙センター(鹿児島県)に駆けつけるつもりだ。
過去にロケット打ち上げにかかわった経験のある奥山准教授は「無事に打ち上げが成功した時の喜びは言葉に言い表せない。学生たちがどんな顔をするか楽しみだ」と話す。
■小型副衛星
ロケットの打ち上げ余剰能力を生かし、本来の目的の衛星と一緒に打ち上げられる。民間企業や大学による宇宙利用・研究のすそ野を広げる機会として活用される。宇宙航空研究開発機構(JAXA)が打ち上げる「あかつき」にはUNITEC−1を含め、公募に応じた計4基が相乗りする。
(2010年1月9日 中日新聞夕刊1面より)
国内20の大学などによる共同プロジェクト、深宇宙探査機「UNITEC−1」の開発で、愛知県蒲郡市の愛知工科大の学生が製作を担当した機体が完成。最終試験を経て、今年中にも日本初の金星探査機「あかつき」に相乗りして、H2Aロケットで打ち上げられる。地元企業のサポートも得て、ものづくりの先端を体験した学生は「自分の手で作ったものが宇宙に行くなんて信じられない気持ち」と打ち上げを心待ちにしている。 (蒲郡通信局・中山聡幸)
UNITEC−1は、一辺35センチの立方体で、「小型副衛星」と呼ばれるタイプの衛星。開発にはNPO法人「大学宇宙工学コンソーシアム」に所属する大学、高専が参加した。国の宇宙機関以外の民間団体が、地球の重力圏外での活動に挑戦するのは、世界で初めてという試みだ。
打ち上げ後、地球から約6300万キロ離れた金星に接近してから、太陽の周りを楕円(だえん)状に周回。慶応大など6つの大学が製作したコンピューターを積み込み、過酷な環境の宇宙空間でどれが最後まで正常に働くか「生き残り競争」をするのが最大のミッション。
愛知工科大では、工学部ロボットシステム工学科の奥山圭一准教授(46)の研究室が参加。「以前から宇宙に興味があり、話を聞いて飛び付いた」という浅倉秀紀さん(22)ら4年生の5人が、実験の舞台となる機体の製作を担当した。
機体には、ロケット打ち上げ時の振動や金星近くでは200度からマイナス270度に激変する温度差に耐える頑丈さと精密さが求められる。作業は昨年4月、北海道大と九州大が担当した熱計算と構造計算の結果を踏まえ、図面を書くところからスタートした。
学生たちにとって、宇宙探査機の製作はもちろん初めての体験。部品の形状に試行錯誤を重ね、別の衛星に使われた太陽光電池を再利用する独自の加工法も編み出した。時間的制約がある中、いざ組み上げるとねじ穴の位置が違って真っ青になったり、搭載部品の仕様が1つ変わっただけで芋づる式に全面的な見直しを迫られたりもしたが「みんなの熱意」(奥山准教授)で切り抜けた。
■蒲郡の企業もサポート
学生らを全面的に支えたのが地元の精密部品加工業・蒲郡製作所。部品の材料となる特殊なジュラルミンなどの製造・加工を請け負った。伊藤智啓社長(49)は「プロとして、学生の引いた図面以上に精密なものを作り、学生の気持ちに応える仕事ができた」と産学連携の成果に胸を張る。
打ち上げは、2010年度内とだけ決まっていて時期は未定。「あきらめなければ何でもできることが分かった」と振り返る学生は、大学に残る1人を除き4月に就職の予定だが、「絶対にこの目で見届けたい」と種子島宇宙センター(鹿児島県)に駆けつけるつもりだ。
過去にロケット打ち上げにかかわった経験のある奥山准教授は「無事に打ち上げが成功した時の喜びは言葉に言い表せない。学生たちがどんな顔をするか楽しみだ」と話す。
■小型副衛星
ロケットの打ち上げ余剰能力を生かし、本来の目的の衛星と一緒に打ち上げられる。民間企業や大学による宇宙利用・研究のすそ野を広げる機会として活用される。宇宙航空研究開発機構(JAXA)が打ち上げる「あかつき」にはUNITEC−1を含め、公募に応じた計4基が相乗りする。
(2010年1月9日 中日新聞夕刊1面より)